概要
彼の者、魔神に見染められし欲望の徒
「――他に求めることなど何もない、そう思っていた」
席についた男は、この言葉を最後に黙り込んでしまった。
血赤の瞳を諦念で染め、彼は背筋を伸ばして座っている。
こちらの視線に気づいたのだろう。彼の口元で埃の流れが乱れた。
「物語の説明をオレにさせるとは……神のなんと悪趣味なことか…………」
男は額を押さえる。まるで何かを耐えるかのように。
卓上には本が一冊。それは黒に金字の鮮やかな、真新しい装丁を施されたもの。
彼はそれを開いて続ける。
「改めて自己紹介を、オレはポプリ。フレイヘイト・パフリクト共和国陸軍、六〇一独立魔装中隊、小隊長。階級は中尉だ」
結末を先に聞かされることほど、興が醒めることもないだろう。そう言ってポプリは沈黙を纏った。
それに待ったをかける誰か
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?