プロローグ
「KISHAAAA!」
「右頼む」
「りょーかいっと」
指示に従い、少年は指定された敵を排除する。同時に、指示した少年も高く跳躍していた。
「【
腰から一枚の紙を取り出し、投げつける。得体の知れない魔物――蜘蛛のようなソレは気にせず少年へと飛び掛かった。
寸前。
投げ付けられた符が輝き、魔法が発動した。
風の波が開放され、流れるように蜘蛛の周りを飛来する。ぶつかる度に皮膚を削り、肌を抉る。
やがて四肢を切断し、ついに心臓をも貫いた。最早、抵抗するだけ虚しい状態だった。
「いやー、楽になったな!」
「だな。流石に半年間は辛かったけど」
そう言うと、2人して笑った。少年たちの名前は、カカズとリアス。[
「さて、後は戻るだけだっけ?」
「ああ。戻って、その後は皆の目を覚まさないとだな」
「そっかー……! 無理言って付いてきちまったけど、そういや全員に幻術掛けたんだもんな」
「良い練習になったけどな」
そう答えると、苦い顔をして嘆息する。
「俺もその位の能天気さがあればな……」
小声で腹立たしいことを言うので鉄拳制裁。
「イッ?!」
「別に能天気なんじゃなくて、これに関しては自信があるだけだ」
頭を押さえるカカズに、そう説明する。
実際、【
「ほら、いつまで呻いてんだ。行くぞ」
「ちぇっ、ちょっとくらい気遣えよなぁ」
「お前がこの程度でどうにかなる訳ないだろ」
この鋼鉄体が、という言葉は呑み込む。彼、カカズは凄い奴だった。どのくらい凄いのかというと、皮膚だけでほとんどの攻撃を防いだのだ。
カカズが【龍化】状態だと、《今の俺》だとほぼ攻撃手段が無いくらいに。
そんな事を思い出していると、背後が煩い。
「静かにしろ、[
『いい加減名前付けてくださいよー』
「え、ヤだ」
『酷いですー』
この、語尾が伸びているバカみたいな奴は、何と龍種の中でも上位に位置する。炎龍という種族の王なのだ。
ちなみに、《拾った》。何馬鹿な事言ってんのとかついに頭狂ったとかの質問は当然かもしれない(?)けど、事実なのだ。
修行している最中に、拾った。それも、運良く懐かれた。
炎龍王という存在は性別が無いらしく、番いとなる相手に合わせた異性になるのだという。名前が無いのも、若干関係があったりする。
「レナにあげるってったって、気に居るかわからないぜ?」
「嫌ったら嫌ったらだろ。その時は飼い慣らせば良い」
「ま、それもそうだなぁ」
カカズはこの半年で、随分と接し易くなった。前の能天気過ぎる部分が薄れ、明るさが前に出た雰囲気だ。
対して俺は、何も変わっていない。正直、実力以外で成長できた部分は俺自身ですら見つけられたなかった、悲し。
「お、そろそろ着くな」
「じゃ、頼むぞ」
「おぅ!」
快活な返事と共に、カカズが両手を前へと掲げる。この半年間の修行の成果。
俺はもう、独りではないのだ。全てをこなす必要は無い。ただ一点を極める。その他は全て、仲間に託す。
「払え
カカズが、【龍化】状態の俺の【幻想魔法】を解呪した。
「成功だ。やっぱり、成長したな」
「まー、リアスに追いつこうと必死だったかんな」
「防御と根性はカカズに越されてるさ。解呪だって、俺と同じまでできるのなら充分だろ」
「いや! 俺は解呪だってリアスに勝ってみせる!」
「なら【
「ごめん無理言ったから謝ったからどうかそれだけは勘弁してくださいハイ」
ナレーターもビックリであろう噛まなさで土下座を決め込むカカズ。
(はっはっはー、そんなに恐れることでもないぞー……? うん……? 多分……)
ちょーっと《本人が最も恐怖を感じる悪夢》を永続的に強制的に見せるだけだ。解呪のためにはその悪夢を24時間耐久するだけだ。
うん、カンタンナコトサ。
カカズに怪しげな目で見られたので終わり。
空気を入れ替えるように、洞窟の先を見る。いや、洞窟の入り口を見る。
――遥か遠く、高くに位置する、外への兆し。
緑と青を交えた景色が、その外には広がるのだ。何重にも、視界いっぱいを埋め尽くすように――。
此処まで来た。歩んだ道のりを、再び始める時が来る。転機を告げる鐘の音は、もうすぐそこなのだ、きっと。
「さ、行くか」
「ん!? お、おう!」
一瞬遅れたカカズの返答に締まりの無さを感じる。けれどまあ、それで良い気もする。
〝龍神の口〟と呼ばれる、外界から見た〝
奇しくもその一歩は、半年ぶりの帰還を示す一歩であり――
――そしてまた、”待ち続けた者”が一歩を踏み出すのと同じ瞬間であった。
――――――――――――――
第二部のプロローグです(*'ω'*) え? 遅いだって? 気にしちゃいけやせんぜ親方(*´з`)
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