因果
[
戦士団と長とどちらの意見が上かと問われれば戦士団の方が高く、よって戦士団長に選ばれることは種族全体のトップに立つのと等しい。
ルドレス家は、武に重きを置く一族であり、トワレイス家と対を為すほどの力を持っている。
それでも僅差でトワレイス家の方が武力で勝ったがために戦士団長を任されているが、その武力が均衡しているが故にルドレス家も高い地位にいる。
その息子たるドクレナという少年は、僅か14歳という歳にして実の父たるドナレクと組手をできるほどらしい。
その力は種族としても素晴らしく、多くの龍人が彼に教えを乞うているらしい。
(で、そのドクレナが密かに想いを寄せているのが……)
種族長レグニスさんの娘だそうだ。少しばかり病弱で、戦いは苦手だが読書家であり、多くの知識と心優しいと評判だった。
そんな彼女に想いを寄せているドクレナという少年と、レナがお見合いをする。
それこそが、《トワレイス家の母親》が考えた結婚図だという。
(バカバカしい)
まず第一の根本から間違っていると声を大にして言ってやりたいが、そんな時間も無い。
天然か、人工かは定かでは無いが、洞窟の通路は入り混じっている。広大過ぎる洞窟なので、ある一定の距離から中が俺たちの集落だ。
複雑な経路は迷子になる者もいるために、必ずある指向性で補助されている。
(光が多いのは……向こうだな)
必ず集落の中心、長の家がある場所に向けて、光源となる苔の数が増えているのだ。人工的に行ったために、その加減は不規則で、たまに間違っていたりするらしい(それダメだろ……)。
光が多くなっているのは右側に伸びる3本の通路。どこを選んでも行けるということなのだが、俺は迷わず最も狭い通路を選んだ。
そのまま、景色を気にせずに全力で走る。
「【
基本的に俺は、多くの魔法は使わない。というより、使えない。魔の極致に至ったのは事実だが、それは【
人の体には何事にも限界があり、魔法に関しては極められる属性が1つと決まっている。
だからこそ、他の属性は一般的に天才と称される程度にしか嗜んでいない。そして、使えば使う程に上達し、それに反比例するように【幻想魔法】の熟練度は落ちていくのだ。
それを防ぐために、魔法は多用しない。もちろん、大魔法は、という意味で。
足の筋力を上昇させて、さらに速度を上げる。目標の長宅へと魔力察知を飛ばし、方角を確認。
――フッ、と……。
(?……見慣れない魔力……ッ!)
コンマ1秒にも満たない中で、幾つもの事象が重なった。
種族長宅に、[龍人族]以外の種族の魔力を感じた。
その場に居合わせた、[龍人族]の魔力が消失した。つまり、死んだ。
[龍人族]《以外》の魔力が1つ、消えた。
――[魔族]の魔力が現れた。
同時に違い種族の魔力が消えるということは、つまり戦いが起きているということ。
そして、魔族の魔力があったということは――
「不味いなッ……!」
(頼む、せめてレナは無事でいてくれ!)
事態は大きく動き出した。それは、さも英雄の帰還を願うようであり、世界の異変を象徴するかのようでもあった。
何よりも、リアスとレナ《も》掟を破り、〝地上へ出る〟ことになることが、全ての始まりとも言えるのだろう。
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