決闘(3) 彼の真実



 リアス・テネ・トレイトは〝《転生者》〟だ。

 名も無き世界に生まれ、再び生を貰い受けた存在。


 前世は『覇王』を名乗る猛者であり、魔王討伐の先人者と呼ばれている。




――〝それ〟こそが彼のスキルだった。



 【幻想魔法ニア・マジック


 対象の思考へと”刷り込み”の要領で誤認を与える【魔法】。ただそれだけの力。彼が得た力は、それだけだった。


(これじゃあ、何にもできないじゃねぇか!)


 幼き彼は怒った。恨んだ。神に、己に。

 しかしそれでも、諦めるという選択だけはどんな時でも除外するような少年だった。


 魔法を使いたい。誰よりも強くなりたい。誰よりも目立ちたい。


 そんな欲望のために、諦めたことはたったの一度も無かった。執念と、気絶する程の修練の先に基本属性とされる火と水、風と光、闇の【魔法】を修得した。

 そのまま、今度は腕が千切れる程の反復練習の先に剣の極意とされる【剣技】を修得するに至った。


 時間ならたっぷりとあった。平民であった彼には義務などなく、ひがな1日中を自由に過ごす時間があったのだから。

 そのどれもを、自分の夢へと向けて注いだ。その先に見つけたのは、1つの究極論だったのだ。


(幻想魔法を極めれば、世界中の人を欺けるんじゃないか?)


 何とも支配欲と優越感に浸れそうな欲望だった。そして、思い立ったからには諦めるという選択肢は無かった。


 まずは、精神を極めるために仙道の道を究め続けた。10年にも及ぶ山の中での厳しい修行の末に仙人となると、彼はすぐさま次の行動へと移った。

 その頃には働かなくてはならない歳ではあったが、彼はその天才たる頭を十全に使い、はした金には困らない生活をしていた。


(次は、魔力量の解決と魔法の極意だな)


 魔力量は仙道の道を歩むとともに瞑想という行為で少しずつ増えていくことを知っていた。

 既に幼少期から暇ならば瞑想をしていたがために魔力量は十分にあった。けれどそこで満足するはずもなく、彼はそれからも永遠と瞑想は続けていた。

 

 魔力の極意を得るために、世界にただ1人とされる大賢者を彼は探し続けた。

 執念ともとれる思いの果てに大賢者の元へとたどり着いたのは、仙人になってから2年の歳月が経っていた。


 それから、弟子となり魔法の神髄を説かれる頃にはさらに1年の月日が流れた。しかし、こうして彼は魔法の極意を修得した。


(ここまできたら、次こそは幻想魔法の極意だな)


 魔法にも、属性毎の極意は存在する。その属性の根本と、原点となる歴史を紐解き理屈を理解すれば、さらなる力を得ることができるのだ。

 彼は、そのために幻想魔法の極意を知る者を探し――挫折した。


 どれだけ入念に調べても、たったの欠片もその者への道は無かったのだ。そこで彼は知った。


(幻想魔法の極意に辿りついた者はまだいないのだな)


 そうとわかれば彼の行動は迅速かつ正確だった。


(俺が極意を見つければいいのだろう?)


 それから、彼は何と2年という短期間で極意を取得するまでに至った。20歳になった年のことだった。



――世界は反転した。


 彼は幻想魔法の極意を読み解く中で、たった1つのどうしようもない諦めを覚えた。

 人生で初めての断念は、幻想魔法による自身の進化。より上位の存在となることを望んだが、それは不可能だと理解してしまった。

 

 そのために彼は、世界中に2つの幻想魔法をかけた。


 そして4年後。魔王は倒された。


――彼1人の手によって。しかしその真実も、彼の幻想魔法によって塗り替えられた。


 五英雄という偽りの存在が生まれ、彼の存在は一気に低くなった。




 これこそが、俺の前世の真実だ。だから俺は、本当は【幻想使い】である。それも、俺自身が誇るレベルで極めたと言える。


 レナの、彼女の隠された力は、俺には対応することの不可能な部類だった。予想外の、初見となる力を、たった1秒の間に打ち込まれ続ける動揺。

 そして、さらに新たなる未知の存在による連撃を体験してみて、俺は彼女の力の奇怪さを知った。それと同時に、興奮も感じる。


 彼女の攻撃によって、俺は完膚無きまでに倒された。


――《俺の目の前に倒れる俺》がそれを証明している。


「え?」


 戸惑うように俺を見つめる彼女に、俺は誘うように告げた。


「ようこそ、【俺の世界】へ」






――――――――


 ふっ、決まった(*'ω'*)ドヤ

 ちなみに、本当は真正面から戦うキャラじゃないんで、正攻法で同レベルだとボロ負けします(。-`ω-)

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