幻と決着と
~前書き~
今回も短いですが、その分すぐに投稿できました。もっと、描写力を鍛えます。今は、これでも頑張ったほうです。
――――――――
何が起きた? 俺の心臓が貫かれている。
なぜ? わからない。無駄な自問だと頭の片隅で理解している。だがしかし、混乱する頭がそれを否定していた。
大丈夫だと、思ってしまった。警戒を怠ったつもりは無い。
煙が晴れ、視界が広がった頃には、俺の意識はほとんど無かった。
僅かに残る意識で、視界の奥のナニかを捉えた。無数の触手が宙を舞っている。黒いような、だがしかし、詳細を知るよりも先に視界に靄がかかってくる。
限界が近いことが鮮明に分かる、沸き上がってくる虚無感と脱力感、その両方が無気力にしていく。
ナニかが動いた。花が開くように体の中心から黒い靄を広げていく。
螺旋状に段々と開き、その奥に妖しく輝く光が見えた。不気味に魅せる輝きを背景に、ついに意識の欠片も消えていく。
――ああ。
せめて。
「……レ……ナ……」
この世界で、この世界じゃない住人。今なら分かる。最も〝適正〟のある異界から呼ばれた者。
絶えた。ナニかは思考する。ソレは危険でそして甘美な魅惑を放っていた。
魔力を吸収し、知識を奪い取り、体を真似る。ソレはそう在った生物であり、それこそがソレの全てだった。
心臓である
ナニかはそうやって生きてきて、今に続いていた。だからこそ、今回吸い込む極上の餌に興奮せずにはいられなかった。触手が死体を掴み、引き摺る。
そのまま、全てに終わりを鳴らす。この次は、異界の魂を。そうすることで、敬愛する主君のためになるのだから。
これで、終わり。全てが。
――?
ナニかが気付いた時、ソレは有った。自身の視界の僅か下、後方から鋭く自身のコアを貫いている金属。
コレは、まさか、いやそんなはずがない。これは、まるで先刻殺した奴の剣と同じではないか。いや、でも、しかし。
混乱した。その事実を、ナニかは必至に否定した。大振りに触手を振り回し、最大限の防御魔法を何重にも重ねる。
しかし。
キン――!
刃が動いた。素早く一閃し、コアを正確に2つに切り裂いた。
それだけで、ナニかの生命活動は停止する。全ての供給が断たれ、全てが終わりを告げる。
殺したはずだ、死んだはずだ。しかし、その妄想は鮮明に否定された。
パリッ、パリンッ!
――世界が歪んだ。
――時空が、捻じ曲げられた。
「『全ての事象をも書き換え、己の想うがままに幻を見せる』」
背後から、声が聞こえた。しかし、既に振り返る余力など無かった。
ただ一つ、わかったことがあった。ソレの人生史上、最も重大で最後の発見だった。
数多に保有する記憶の中で、最も強敵であり、決して勝つことの出来ないであろう、”天敵”。
――なぁ? どうだった? ……〝全て〟が俺の物だ。俺の望む全てを手に入れる。何者にも邪魔はさせない。
「【
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