エピローグ、そして序章






「それじゃあ、約束通り答え合わせからだな」

「わくわくーっ!」

「……言ってて恥ずかしくないの?」

「…………恥ずかしい」


 思わず返答に困る。我が2回の人生を以てしても恋愛経験がゼロだとは……うん、自業自得だわ。

 思わず頭を掻きながらも、《約束通り》、素直に答える。


「……今の、可愛い、と、思う……よ……?」

「……あぅ」


 顔を赤くして、彼女は俯く。彼女もといレナの告白(本人は否定している)後に俺たちは2つの約束をした。

 1つ目は、俺が提示した問題に対して、しばらく経っても答えが出なかったら回答を教える、というもの。単に彼女が答えを知らないのが不満だっただけらしい。


 2つ目が、彼女に対しての気持ちを胸にしまわないこと。今となっては分かるが、レナはかなり寂しがり屋だ。

 その出自を考えれば大抵予想は付くが……。他人からの気持ちがわかっていないと不安だとか何とか……。


(あの時は、凄い捲し立ててきたな……)


 思わず苦笑。俯いているレナに気付かれていないことを確認してから、小さく笑う。


 それはもう必死に、弁解するかのように言い募ってきた。俺としては、魔王というレナの対極の存在が現れたことで不安定になった魂と繋がり、レナのおおよその感情がわかっているので、正直あまり隠せていない。

 まあ、そこまで詳しくは無いのだが、少なくともレナから俺へ少なくない好意があることは気付けている。


「……ん、んッ! ……それじゃあ説明するけど、『なぜ龍門が存在するのに魔力が大量にあるのか?』で良いんだよな?」

「……うん」


 よし、あらかた戻ってきた。

 レナの様子にそう感じ取り、僅かにガッツポーズ。


「まず初めにだけど、龍門と魔力炉の違いを説明する。勿論、龍門は龍力を、魔力炉は魔力を精製するための器官ではあるけれど、その外にも大きく違う役割を持っているんだ」


 簡単に纏めるなら、名前通りに門と炉だ。龍門の場合、龍力を精製する仕組みとは、空気中の龍力を門を通すことで自分専用の力に変換する。

 対して、魔力炉の場合は空気中の自然魔力を自身の血流と同時に循環させることで魔力を精製するのだ。


 そのため、魔力炉とは心臓のような働きをし、龍門は[龍人ドラゴニュート族]に存在する別機器のようなもの。

 そこで、龍門は通常通りに存在させ、魔力炉という器官を《心臓と同化》させることで、《魔力精製器官》を完成させられる。


「え、じゃ、じゃあリアス君は心臓に魔力炉があるの?」

「まぁ、極的に言えばそうだけど、少しばかり違う。心臓の仕組みに、追加で魔力の吸収と循環、そして変換を与えたんだ」

「危険じゃないの?」

「危険ではある。だって本来在るべきない機能を無理に追加するんだから。けれど、俺がすれば危険は少ない。そこの説明はちょっと難しいから無理だけどな」


 そうやって締めくくる。納得した顔半分、少しばかり不安そうな顔をするので、その頭に手を乗せる。

 先日の1件以来、俺はスキンシップを少しばかりできるようになってきた。小さな成長だが。


「大丈夫だ、安心しろ」


 そう言って笑ってやれば、恥ずかしそうに笑顔をくれる。安心したようで、俺としても嬉しい。


 それから少しの間そうして、やがて合図ともなく離れる。小さく息を吐いてから、俺は視線を上へと向けた。


「……なぁレナ、前に言ったことがあるんだ」

「なに?」


 無垢な瞳が、俺を捉える。しかしそちらは向かず、ただ俺は目前にただ広がる洞窟の天井を見つめていた。そのさらに奥に見えるものを。


「俺は前世で覇王だった。俺が名乗った訳じゃなく、ただ当時の民が名付けただけだ。でも、それが嬉しかった」


――初めて、努力を誉められた瞬間だった。


「それから、そう長い人生では無かった。でも、悪くない人生だった。その最後に、俺は夜空の下で願ったんだ」


――当時は傷だらけだったけどな。死ぬ寸前の、愚かな願いだ。


「今度は、この星の降る空の下で、笑って在りたいって」


――願いで、願望だった。やっと、その時に本当に渇望できた。


「今、空を見上げても空は見えない。きっと、此処に居る限り永遠に」


――それでも良いかもしれない。レナが居るなら、それだけで。でも、


「……」


 言葉が、出なかった。伝えようとした言葉は簡単で、だけど出なかった。

 まだ幼いリアスが、怖がっている。強がりの俺と、臆病なリアス。互いを認めたから、だから。


「半年……半年、待ってくれないか?」


 ただ無言で、レナは寄り添ってくれていた。そこで初めて、俺は再び彼女と目を合わせる。

 あと半年で、いったい俺に何が出来るのかはわからない。けれど先延ばしにするのもダメな気がした。

 

――だから。









「その時に、迎えに来る。―――――――――」


 そう言って、リアス君は行ってしまった。まるで幻のように、その日の午後には消えていた。

 唯一、もう1人の友人だったカカズも消えていた。皆はそのことをほとんど気にしない。

 というより、リアス君とカカズの事を覚えていないみたいだった。あんなに仲の良かったリアス君の両親までもが、覚えていなかった。


 まるで幻、まるで夢。でも、私は待つと決めた。リアス君が、リアス君の気持ちが、何となく伝わってきたから。


――だから。



『次会う時は、俺が勝つ』

「次会う時は、私が勝つ」


 決意を胸に、道は違えた。






――――――――――――


 ということで、とりあえずの1章完結です。読んでくださる皆さま、ありがとうございます(*‘∀‘)

 リアス君とレナは、半年間、いったいどこで何をするのか。そして、カカズ君はどうなるのか( ゚Д゚)! 是非2章も読んでもらえると嬉しいです(*'ω'*)


 完璧な宣伝だった(*'ω'*)ドヤ。

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