決闘まで(2) 大陸誕生まで



「んーー」


 基本的に、俺は問題の答えがわかるまで答えは教えない主義だ。だから、目の前で可愛らしく頬に手を当てて考え込むレナを見ても放置している。

 レナが悩んでいるさなか、俺は俺で鍛錬をする。日課に近くなっている、【魔法】のコントロール能力の上昇だ。


 レナに出している問題にも近づくが、この体の魔力量は異常だ。それに対して、龍人という種族は魔法の扱いは際立って下手だ。もちろん、使わない種族だから。

 そのせいか、この体で扱う魔法の精度はなんと、能力を十全に引き継いだこの状態でも半分程度しか扱えない。


 そうだな。どんなにゲームが上手な人でも、コントローラーが変わったらそこまで、という現象に近い。

 だからこそ、しっかりと鍛錬をしないといけないのだ。


「【魔力精製】」


 超初級の魔法。というよりも、その名の通り魔力を精製する技。

 基本的に魔力というものは自然に回復する。それこそ、血のように魔力炉によって生成される。しかし、その量には限りがある。魔力炉によって生成される魔力量は、魔力炉によって比例する。

 

 そのために使われる瞑想の類に入るのが、魔力精製だ。

 

(魔力は、なにも魔力炉からのみ生まれるものじゃない)


 それこそ、空気中にだって含まれる。原理は不明だが、魔力というのはどこにだって存在する。それを、自分と同じ属性へと変換して取り込む。それが魔力精製の本質である。


此処ここは魔力で澄み渡っているな)


 未だかつて、龍という存在は世界全体で恐れられている。何よりも、龍人という、龍の血を宿しただけの種族でありながら、これ程に異常な性能を誇る訳こそが龍そのものにある。


「それじゃあ、息抜きに豆知識を教えるよ」

「なになに?」


 興味津々といった様子のレナ。そんなに悩むのが嫌いなのかよ。


「この世界は、3つの大陸がある、っていうのは分かるよな?」

「うん、魔大陸、人大陸、獣大陸の3つだよね?」

「その通り。じゃあ、何でその3つの中で、獣大陸の中央にこんなにも大きな穴があり、そして俺たちが住んでいるのか、って話だよ」


 別に、偶然であったなら話したりはしない。

 けれど、偶然ではなく、理由があるからこの場所にこの洞窟があり、俺たちが住んでいるのだ。


「遥か昔、龍は世界中で4頭確認できた。赤い龍、青い龍、白い龍、黒い龍の4頭。そのころから龍は絶大な力があって、その気になれば一瞬で世界中を平らにすることもできたんだ」

「でも、今はいないよね? やっぱり、死んじゃったの、かな?」

「いや、違う」


 でも、半分は正解でもある。


「ある時、《白い龍》が世界を乗っ取ろうとした。手始めに弱過ぎた生物たちを滅ぼそうとしたんだ。そこで、残る3頭の龍たちは白い龍を止めようとした」


 龍は、強過ぎるが故に成長していくことはない。だからこそ、白い龍を3頭で襲えば絶対に勝てる。


――はずだった。


「結果は惨敗。見事に白い龍は3頭の龍を撃退したんだ」

「え? 3頭の龍で倒したんじゃないの?」


 そう、誰もが疑問に思うだろう。けれど、


「白い龍は賢かった。自分の力では負けると知っていたから、密かに鍛錬していたんだ。でも、それはほかの龍だってやらなかった訳じゃない………しかし、何百万年も弛まぬ努力をした白い龍は、遥かに強くなっていた」


 ぼろぼろになって逃げ去った3頭の龍は、しかし諦める訳にもいかなかった。白い龍を野放しにすれば、いずれ自分たちにも被害が来ることは明白だったからだ。


「だからこそ、3頭は協力して白い龍を封印することにした。それぞれが《大地と成り》、巨大な魔法陣を描いたんだ」


 魔方陣とは、魔法の効果を最大限にまで高める円陣のこと。幾何学模様によって記された魔法は、魔方陣でしか発動できないものすらある。


「けれど、圧倒的に魔力が足りない。そこで、3頭の龍は考えた。出した結果は、世界そのものの魔力、つまりは自然界に溢れる魔力を代用することだった」

「で、でも、自然の魔力は扱えないんだよね?」

「だから、龍たちは自分たち以外の大地を全て海に変えたんだ」





――――――――


 難しい話はわからない? ――私にもわからないさ(*‘∀‘)!

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