決闘(2)
レナ・トワレイスは〝《転生者》〟だ。
地球という星に生まれ、異世界へと転生を果たした存在。初めは、慣れぬ異世界に困惑した彼女だったが次第にそれも消えていった。
3歳になったある日、リアスと名乗る子供が自身を〝転生者〟だと言った。
(覇王……やっぱり、戦いのある世界なんだよ、ね?)
せっかく転生を果たし、可愛らしい姿の少女へと生まれ変わった以上、死ぬなんて論外だ。
それに、戦うというのも正直怖い。元は地球で過ごしていた高校生なのだ、自分は。そう内心で呟きながら過ごしてきた彼女に、リアスという少年は告げた。
「弱ければ、死ぬだけだからな。強くなることに意味なんてなくたって、生きられるならそれで良いだろう」
その時に、レナはこのリアスという少年に惹かれるようになる言葉を貰った。
弱くては死ぬ。だったら強くなればいい。それで生きられるのなら、と。
そして――
「今度は、最強じゃなくて、幸せになりたいんだ。誰にも邪魔されず、好きな人と過ごせるような、そんな人に。だから俺は強くなる。前世で嫌という程知ったんだ。弱いならそれだけけで潰れる世界なんだ、って」
その言葉の重みは、半分も理解してあげられなかったが、鐘のように骨まで響いたことは覚えている。
それと同時に、そんな人生に自分もなりたい、と思った。
だから、彼女は強くなった。転生を果たした瞬間に、自身には特別な力があることに気付いていた。
初めは、その不審な力に怯えて見なかったが、今なら、と。
それは今、彼女の目の前で実際に証明されていた。
「ッ!」
「ふっ!」
レナの姿が消えると同時に、少年は後方へと手に握る木刀を振るう。
そこに《生んだ刃》に気付いたことに驚きつつ、ならばと此方から刃を《生む》。
瞬時に対応した少年へと、今度は右から刃を生み出し、左からレナ本人の剣で迫る。
(【転歩】)
これこそが、彼女の《2つ目》の
能力は、縮地の極限化。縮地は直線状を本人の最高秒速パーセントを100にすることで一瞬で移動する技。
それに対し、転歩の場合は【転移】に近い。
異空間を一瞬にして移動し、姿を現す能力であり、察知は不可能。移動距離も方角も好きなだけ選べる。
両側から迫る刃に少年が木刀を一瞬にして左右に振り切るのを見終わる前に、彼女の姿は少年の後ろに移動する。
背中から見ると、その無防備なはずの背からも立ち竦みそうなほどに強い何かを感じる。
炎に包まれた姿は、近くにいるだけで暑く、体温と集中力を減少させていく。
狙うのは短期決着が好ましく、それ以前に全力でぶつかることこそが重要。それに――
(私以外の
どこか酸っぱいような感情のために。
「ふっ!」
「!?」
捉えた。右手に逆手で握られた短剣が、彼の背中へと切り傷を付ける。
深くは無い。決して致命傷には至らない些細ていどの傷。けれどそれは、彼女の猛攻撃への兆しとなった。
(【
転歩の派生的な技。高速で転歩を発動させるために、時間が止まったかのように攻撃できる。
自身すらも移動を制御しきれないため、事前に技の動きを定める必要があるが、今回は例外だった。
(背中からなら、やっぱり星型だよね)
背中を中心に、星を描くように瞬時に転歩を発動させていく。
その際、相手の姿は見えないので、常に短剣は振るわれる。
…ザン!…ザン!…ザン!ザン!ザン!…
不規則に鳴り響く音と手応えを確かに感じながら、レナはさらに畳みかけるようにして重心を傾けた。
星(☆)の最後の一点を目指すように右から回転をかけて切り抜けて、さらに半回転しながら止まる。そのまま、《3つ目》の
「【
レナの残像、星を描くために通った全ての残影が、再び行進を開始する。レナが[最後まで切り裂いた]という点までの動き全てをぴたりと合わせながら切り裂いていく。
その全てに実体が存在し、全てが切り裂いていく。
たった2秒。
たった2秒にして、レナは己の持ち得る全力の攻撃を行った。
(手応えはあったよね……うん、大丈夫なはず……)
取り戻していく時の中、そう思考をしながら振り返る。
その先には――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます