第17話 レビューの「いいね!」が演出する二つの再会


 カクヨムのシステム改修により、おすすめレビューに「いいね!」が付けられるようになった。


 狙いとしては、レビューに対する評価をすることで、レビュアーのモチベーションアップを図ること。読み手不足が課題となっているカクヨムの活性化につながるものであり、とても良い試みだと思う。

 他方、自分が書いたレビューに「いいね!」が付されたとき、本来目的とは別に素晴らしい効果があることを実感した。


 「いいね!」が付された際、その内容が通知されることで、過去に自分がどんな作品を読みどのようなレビューを行ったのか、また、その書き手とどのような交流があったのかを知ることができる。

 「過去の出来事を思い出してノスタルジーに浸るだけ」。ドライな見方をする人はそんな風に思うかもしれない。でも、ボクはそうは思わない。


 「いいね!」が演出する「二つの再会」がとても重要なものだと感じられたから。


 一つは「書き手とその作品」との再会。もう一つは「過去の自分」との再会。

 前者は、何らかの理由で疎遠になってしまった書き手や今はいなくなってしまった書き手のことを思い出したりその作品に目を通すことで、交友関係の復活や新たな刺激につながるもの。

 後者は、当時の自分が書いた文章から感性や文体の変化を確認し、今の自分を客観視することで今後の執筆に生かしていけるもの。


 たかが数行のフレーズではあるけれど、レビューを書いたのは小説を読んで感銘や刺激を受けたことの現れ。文章には気持ちがこもっている。

 そう考えれば、過去の自分が綴った、真摯しんしな文章を読み返すことで何かしら得るものがあるのではないか? 「自分はこんな文章を書いたのか?」などと戸惑うことがあるかもしれないけれど、その戸惑いを「気づき」という言葉に置き換えればプラスに作用する。


 ボクは二年と少し前にカクヨムにやってきた。当時公開した作品を読み返すと顔から火が出るくらい恥ずかしくなる。文章が公開に耐え得るものになっていないから。実は、読むたびに少しずつ修正を加えている。

 当時は勉強のために毎日小説に目を通して、できるだけレビューを書くようにしていた。今回「いいね!」の通知があって当時のレビューを読み返した際、小説同様、恥ずかしいものが多数見受けられた。

 ただ、バイアスを掛けることなく発している、怖いもの知らずの文章や、粗削りながら熱い思いが伝わる文章には、ある意味、心地良さを感じた。


 二年余りの期間で、筆力が向上したことは実感していたけれど、忘れているものがあることは認識していなかった。

 あのときのボクは、技術的には今よりもずっと未熟だったけれど、今の自分にないものを持っていた気がする。今回、過去のレビューからを知ることができたのは大きな収穫だった。


 脳裏に「温故知新」という言葉が浮かんだ。


 全力で真剣に取り組んできたことには意味があり、時間が経ったからと言って、その価値が薄れたり消えてしまうものではない。八方塞りになったり判断に迷ったときには、道を示してくれることだってある。

 論語に収められた、孔子の言葉が、二千五百年の時を経てもなお有益であるように。



 RAY

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