第5話 自分の作品の悪いところを知ろう


 カクヨムに公開されている作品のレベルは高い――と言いながら、書いている人の大部分はアマチュア。

 執筆スタイルが確立し文章が安定しているプロならともかく、発展途上で試行錯誤を繰り返すアマチュアが書く作品には、何かしら欠点があるのも事実。

 厳しい見方をすれば、「悪いところ」が見え隠れする。


 ただ、悲観することはナッシング。

 悪いところというのは足りない部分であって、修正を施すことで作品はグッと良くなる。アマチュアであるがゆえに伸び代はかなりある。

 そのためには、自分の悪いところを具体的に把握する必要がある。それがわからなければ、いくら気持ちが前向きでも成果はあがらない。


 実際問題としてが悩みどころ。自分の作品を客観的に評価するというのは、言うは易く行うは難し。

 「●●の部分が課題」だとか「○○をもう少し良くしたい」といった認識を持っていても、それはあくまで自己評価。他人の作品と比較した相対評価であっても隣の芝生は青く見えてしまう。無意識のうちにバイアスがかかっているかもしれない。


 例えば、NGだと思い込んで必死に修正を行った、奇抜な表現や定型外の構成が、実は評価に値するものだったとしたら、まさに自分で自分の首を絞めていることになる。

 事実を知ってしまったらショックは大きい。でも、事実を知らないのは、ある意味、さらに悪い状況。


 そんなミスマッチを回避するために頼りになるのが、カクヨムのコミュニケーション機能――自分の作品をじっくり読んでくれる人との人間関係の構築。

 ただ、作品の「良いところ」を称賛してくれるだけでなく、「悪いところ」を指摘してくれる人でなければ意味がない。


 皆さんのカクヨム仲間にそんな人はいますか?

 ――なぁんて訊かれて「はい」と答えられる方は、なかなかいないと思う。

 なぜなら、後ろ向きな感想やマイナスの指摘は、人間関係の破綻につながる可能性が大きいから。


 デリケートな部分を指摘するのは、それなりの信頼関係があることが前提であって、バーチャルでそこまでの関係を築くのは難しい。

 仮にそのレベルに達したとしても、一言があらぬ誤解を生んで、せっかくの縁が台なしになるリスクを考えると、ついつい躊躇ためらってしまう。


 親しい人が悪いところを指摘するのは、見ず知らずの輩が行う誹謗中傷の類とはなるものであって、総じて良い方向に向かう。

 ただ、頭ではわかっていても行動に移すのはとても勇気が要る。


 これまで、ボクはそんな指摘をかなりもらっている。

 誤字脱字はもちろん、おかしな描写、気づかなかった矛盾、あまりにも突飛な表現、キャラの性格から違和感のある行動など、挙げ出したら切りがない。


 実際、そんな指摘を掘り下げてみると、自分の悪いところや作品に足りないものが見えてくる。全てを採用したわけではないけれど、自分の作品を見つめ直す機会を得たのはとても有意義なこと。


 当然のごとく、指摘をいただいた方にはお礼を言ったけれど、それは社交辞令でも何でもない。

 忙しい中、真剣に作品を読んでくれて、具体的なアドバイスをいただいたことに心から敬意を表したい――と同時に、大変申し訳なく思う気持ちがある。

 なぜなら、みんなの言い方が、オブラートに包んだような、へりくだったものであって、ボクが傷ついたり不快に思ったりしないよう最大限の配慮をしてくれているのがわかるから。


 カクヨムに来て本当に良かった。


 少しではあるけれど、自分の筆力があがっていることに加え、良いところも悪いところも指摘してくれる仲間――楽しく切磋琢磨できる仲間ができたから。


 プライスレスな出会いというのは、いつも突然訪れる。

 そんな出会いをずっと大切にしていきたい。



 RAY

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