第15話 読者選考系コンテストはお祭りだよ


 カクヨムでは、コンテストの一次審査として、しばしば「読者選考」が採用される。開設から三年近くが経ち、読者選考はスタンダードなものとなりつつあるけれど、それを疑問視する声があるのも事実。

 それは、書き手同士が結託して互いに★を入れ合う「相互評価」を助長するものであって、良作が日の目を見なくなる――「悪化が良貨を駆逐する状況」が生じることに対する懸念。


 確かに、カクヨム開設後、間もない頃に行われた第一回webコンではそれが横行し「★をもらったら★を返すのが当たり前」といった風潮があったらしい。

 当時のボクはカクヨムに参戦していなかったため伝聞になるけれど、書き手同士が疑心暗鬼に陥り険悪なムードが漂っていたとのこと。


 ある状況下において、違法行為が常態化すると規律がお座なりになる。

 例えば、大災害が発生した後、被災地では窃盗や強奪が当たり前のように行われることがある。まさに統治体制ガバナンスが機能しなくなった無秩序アナーキーな状態であって、その行為自体は許されるものではない。ただ、「やらなければ生命に危険が生じる」といった、高レベルの強迫観念に駆られた大衆の行動は、ある意味理解できる。


 他方、コンテストで書き手が暴徒化した状況には、同情の余地は全くない――と言うより、同じ書き手としてものすごく恥ずかしい。

 ボクは第二回・第三回には参戦したけれど、(一部の者を除いて)相互評価の風潮は感じられなかった。カクヨムに参戦する書き手の質が上がってきたのと、自浄作用が働くようになったことが原因だと考えている。


 なお、読者選考システムを採用しているコンテストも、選考手段としてそれがすべてではない。

 ★は基準に達していなくても編集部にピックアップされる作品もある。公平性の確保に加え、良作が埋もれるのを出版サイドの逸失利益だと考え、それを防ぐための安全措置セーフティネットを施している。

 もし読者選考システムが正常に機能していなければ、コンテストの受賞作品は編集部ピックアップ作品で占められることになる。しかし、実際はそんなことにはなっていない。

 このことから、システムは概ね健全だと言ってもいいのではないか?


 それが前提の話にはなるけれど、読者選考系のコンテスト(特にwebコン)は「お祭り」だと思えばいい。「踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損々」という言葉のとおり、積極的に参加しなければ損をする(笑)


 例えば――コンテスト参加作品は非参加作品に比べて読まれる可能性が高い。


 あくまで、ボクが参加した、過去二回のwebコン他数回の読者選考系コンテストのフォロー数・応援数・評価数・PVからの判断だけれど、祭囃子まつりばやしに誘われて集まって来る人は意外と多い。普段は書き専でも、作品をエントリーすることで、他の作品が気になって覗くことが結構ある。


 普段から「読まれない」と嘆いている人には、コンテストにエントリーするとともに、敵陣偵察(≒勉強)のために他の作品に目を通すことをお薦めしたい。


 現段階で、読者選考系コンテストは、出版側の業務効率化に資するだけでなく、多くの書き手にとって意味のあるものとなっている。

 書き手それぞれがそのことを意識して、第一回webコンのような「恥ずかしい悲劇」を繰り返さないよう、秩序を保っていくことが大切だと思う。


 「賞を取れなかったら何の意味も無い」と考えている人は、ボクの言っていることを鼻で笑うかもしれない。

 でも、❤や★が増えたり、ファンが増えたり、筆力が向上したりするのは前進があった証拠。


 だって、すべてはちょっぴりの積み重ねでできているのだから。



 RAY

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る