前向きな人(私の母)の言葉に学ぶ-起こってもいない未来のことは考え(憂い)ても意味がない-
私の母は明るいし、基本的には前向きな人だ。そしてものすごく出来た人でもある。
私のような統合失調症の娘に「真世がいてくれて本当に良かった」と言ってくれるし(私は何度もその言葉を疑い、母を悲しませたが)
家業で、自分が作ったわけではない先代の借金を夫(つまり私の父)と一緒に1億円以上返済している。
私だったら、多分1億円借金があると聞かされた時点で(そしてそれを自分が返さなければならないと聞いた時点で)絶望のあまり首をくくるか、あきらめて、家業をたたんで、自己破産と生活保護の手続きに入るかどちらかだ。
「よし! こつこつ返していくしかないか!」と腹を決め、都営住宅への入居手続きをして、家業の業績を上向きにさせるためひたすらにひたむきに頑張っていくなんて。なんで、そんなことが出来るのか。そもそも、なんでそんな風に覚悟を決められるのか。
その細腕のどこからそんなパワーと気力が湧いてくるのか。
常々、不思議に思っていたのだが、この間、母がどんなふうに考え生きているのか、その一端を聴く機会に恵まれた。
自分としてはほほう! と思う話だったし、もし、ここに書いておけば、私と同じように思う人や、そういう考え方いいな、と思って救われる人もいるかもしれないと思うで記しておこうと思う。
母は言う。
先代が作った店の借金も、先代が倒れてから初めて判明したし、私の病気も寝耳に水だった。弟の離婚も、父の癌も。トラブルだけではない。良いニュースも(今まで何かと気を揉んで援助していた貧乏な親戚に宝くじが当たって援助の必要がなくなった、とか)も判明したのは突然だった。離婚した弟の再婚だって、孫が生まれることだって、予期しないことだった。
「真世と昔一緒に見た、『フォレスト・ガンプ』でも言っていたでしょ。人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと何が入っているかは、わからない』」
裏を返せば、やってくる不運(病気や怪我、トラブル)や幸運(吉報)は自分で選び取ることは、ほぼ出来ない。というのが母の経験してきたことである。
「起こるって決まっていることに備える必要はあるよ。でも、起こってもいない未来のことを憂いても、心配するだけ、その気持ちと時間の損になるじゃない。まだ確定していない未来より、大事なのは現在(いま)でしょ。もちろん、不幸が来ないように、幸運が訪れるように、日々努力しておくことは大事だけれどね」
まあ、確かに私はこの病気になるまで、風邪薬と花粉症の薬ぐらいしか飲んだことのないぐらいの健康体だったし、某国立大学に入学したときは、もうこれで人生安泰だな、ぐらいに思っていたのが、今の体たらくである。
「あとね、箱を開けてみて入っていたチョコレートを食べて、どう思うか、口に合うか、そうでないかっていうのも、意外と食べてみないとわからないものよ」
母曰く、何かが起こった時、自分ならこうするだろう。こう行動するだろう、こう思うだろう、という予想はほぼ当たらない。
たとえば思ってもいない感情が湧き上がったり、
つらい状況でも意外に頑張れたり
自分で選んだ物や一緒にいようと思った人、頑張って掴んだ進路でも自分に合わなかったりする。
「お父さんだってね、最初は軽薄な、いけすかないやつって思ったのよ。私。それが四十年一緒に居るんだからね」
自分の行動や気持ちだって、そうなのだから、ましてや、人の気持ちや行動は、ままならない。
思い通りにしようとするだけ、空しいだけだと。
「コントロールしようとするのを諦めることで、見えてくる景色があるよ」
そう母は言う。
私はまだその境地にはとても至らない。
でも、最近思うのだ。
幸せに触れた時も、不幸に見舞われた時も、これは長くは続かないかもしれない、と思うことが肝要なのではないか、と。
そうであれば、一瞬かもしれない今の幸せを、大切にしようと思えるし、
状況が変わるかもしれないと思うからこそ、不幸に耐えうることも出来る。
ずっとあると思うから慢心して粗末にする。
ずっとあると思うから死にたくなるぐらい辛くなる。
さいきん、あるきっかけで、私は今、生活ががらりと変わった。
断っておくが、恋人や伴侶ができたわけではない。
(逆に、今まで敢えて書いてこなかったが、知る人ぞ知る、ザビエルさんとは1年前にお別れした)
それまでは、自分に絶望し、疲れ果てていた。
こんな状況が長く続くなら死んでしまった方が楽だなあ、と思っていた。
私がしたことはとにかく寝ることだった。
起きていると辛いから、寝るしかなかった、ともいえるが。
その眠っていた時間であれが出来たこれが出来た、と考えることもできるが、
私は、とにかく寝まくって、思いがけない幸運が訪れるまで、時間を稼いでおいてよかったと思う。
そして、この、いつなくなるかわからない幸運を大切にしようと思っている。
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