生きるヒントがもらえるかもしれない文章1 「自分を愛して!」リズ・ブルボー著

最初に言っておくことがある。この本は「薬」にもなるが「毒」にもなりうる。

何故かというと、この本は病気や不調が感情や心に起因するものだと見なしているからである。例えば癌だとか、自閉症などといった遺伝子が大きな要因になっている病気なども含めてである。


こう書くと「じゃあ、読む価値ないや」と思ってしまう人が多いと思う。

でも、それも待って欲しい。


著者であるリズ・ブルボーさんは十五年、病気や不調が感情や心に起因するものではないかと多くの病者とかかわって観察してきた。そして、そこに見られた大きな傾向を著書にまとめた。そして、その著書は、多くの人の心を打ち、ベストセラーになった。これは事実である。


いや、回りくどい、他者に責任を押し付けるような、言い方はやめよう。私は複数の病気を持っていて、この辞書のような、一見医学書のような本の索引を手掛かりに自分の病気の原因についてなんと書いてあるか探ってみた。そして、そこに書いてある原因に思い当たる節があることがいくつもあることに驚かされた。(的外れな意見はほとんどなかった)


もちろん、これも、たとえば占い師が特定の人間に向かって、「あなたにはロマンチストなところがある」「正しい判断や正しい行動をしたのかどうか真剣な疑問を持つときがある」など、人間なら誰しも思い当たることを言ってお茶を濁す(心理学用語でバーナム効果という)叙述トリックがあり、この本に書かれていることが、そのバーナム効果を利用して書かれているのだと言われたら、そういった側面もあるかもしれない、とも思う。


つまり、全て鵜呑みにするのは危険だ、ということだ。


私はまずこの本で持病である「統合失調症」の項を引いた。すると、そこにはこう書いてあった。


「統合失調症は、精神病の一つ、つまり、心の病気の一つです。ノイローゼの患者が病識を持っているのに対して、統合失調症の患者は病識を持っていません。人格に重大な障害がおこるため、現実とのコンタクトを失っていしまいます。「精神病」の項を参照してください。」


……そこで、「精神病」の項を参照してみた。そこにはこう書いてあった。


精神病は自分自身とのコンタクトが取れなくなった人に起こります。私はさまざまなタイプの精神病者を観察してきましたが、その結果わかったのは、精神病者は異性の親に対する憎しみを持っている、ということです。幼いころより、その親からありのままの自分を認めてもらえずに育ってきたのです。したがってその親に認めてもらうために、本当の自分とは別の人間になろうとしてきたのです。その無理が限界に達したときに精神病が発症したわけです。必死になって別の人格を得ようとしたために、ついに本当の自分とのコンタクトがまったく取れなくなってしまったのです。精神病になった人は、一般的に他人の援助を受けようとしません。というのも、そんなふうに自分がみじめになっているのは他人のせい、特に自分とは性の異なる他のひとたちのせいだと考えているからです。


あなたが精神病で苦しんでいるのなら、あるいは精神病の傾向があるのならぜひとも、次のことを知ってください。つまり、本当のあなたとのきずなを取り戻すことができる人はあなた以外にはいない、ということです。

たとえ幼いころにどれほどの苦しみを味わったとしても、必ずそこから抜け出ることは出来るのです。遅すぎるということは絶対にありません。(中略)「精神異常」の項も参照してください。


……少し、心当たりがあった。そして次に私は導かれるままに「精神異常」の項を参照してみた。


心の病気はその人の在り方(存在の仕方)と直接のかかわりがあります。つまり、その人が(在る)こととかかわっているのです。心の病気になっている人はアイデンティティのトラブルを抱えています。自分が本当は誰なのかが分からなくなっています。感じることから切り離されており、ハートを開いて物事や人々を感じ取ろうとせずに頭で理解しようとしているだけなのです。ほとんどの場合、性の異なる自分の親に対する憎しみを持っています。そうした精神異常を治すには自分の幼い頃のことを詳しく思い出し、精神異常の本当の原因を発見しなければなりません。自分自身であることを禁じられた幼いその子は、自分だけの世界を心の中に作り出し、そこに閉じこもって自分の身の安全を図ろうとしたのです。そのために、大きくなってから、正常な世界の中に生きることが困難になっているわけです。一方、精神異常になる人は、あらゆる種類の妄想に非常に取りつかれやすいものです。いとも簡単に自分を、他の何か、または誰かに明け渡してしまいます。その結果、自分の中を見つめることが出来なくなります。これは一種の逃避行為なのです。やがて、ある日、妄想の中にそれ以上逃げ込めなくなって、ついに狂気の中に逃げ込むわけです。


私のこれまでの経験によると精神異常から癒されるための方法は真の意味で「許す」こと以外にありません。ただ、精神異常に陥っている人はそこからなかなか出てこようとしません。というのも、そここそが、その人にとって唯一安全な場所、つまり逃避の場所だからです。ですから、精神異常を持った人を助けようとする人たちは、大いなる愛と忍耐をもってその人に接しなければなりません。そして、その人が他の人を許し、自分自身を許せるように辛抱強くサポートする必要があるのです(後略)。


……そして、私は「自殺」という項目にも目を通した。


自殺を決意する人というのは、それが成功するかどうかは別として、もうそれ以外に解決方法がないとまで思いつめた人です。とはいえ、実際に自殺に成功する人よりも失敗する人のほうがはるかに多いものです。ですからここでの説明は後者に関するものとなります。(中略)自分が幼い時に十分面倒を見てくれなかったということで、親を恨んでいたり、憎んでいたりします。こういう人はまた、自分の限界を尊重しない完璧主義者である場合が多く、「今すぐ、すべてを手に入れたい」と思うタイプです。徐々に目的に近づいていく勇気と忍耐力に欠けるのです。


あなたは自殺傾向がある人でしょうか? あるいは既に何度か自殺を試みた人でしょうか? そういう人に対するからだからのメッセージは「あなたは心の奥の方では、本当は生きたいと思っているのです。でも、これまでのあなたの生き方は決してあなたのために良かったとは言えません」というものです。私はここで、あなたに新たな提案をしたいと思います。あなたを幸福にしなければと責任を感じている人ではなく、あなたに対して客観的に振る舞うことのできる人を選んで、その人に助けてもらって、新たな生き方を実行してください。というのも、自殺傾向のある人というのは、すぐ暗い考えに取りつかれるために、それが自分のニーズに応えているにも関わらず、新たな道を歩み続けることが困難だからです。あなたは、まず、自分に限界があることを認め、一日を一生として生きる必要があります。過去を後悔せず、未来を心配せず、その一日をとにかく生き切るのです。人生を創造する力と再びつながってください。いいですか。あなたが生きているのは、あなたの人生なのです。あなたは自分の人生を望むように生きていいのです。(中略)あなた以外にあなたの決意を引き受けられる人はいないのです。人間という存在は自分の人生の引き受けるのを避けるために実にいろいろなことをするものですが、その中でも自殺は究極の逃避手段であるといえるでしょう。もし、あなたが親しい人を自殺で亡くし、それで今この個所を読んでいるとしたら、どうかその人を裁かないで下さい。裁いたところで何一つ良いことはありません。実に多くの人たちが、この地上で、アルコール、食べ物、ドラッグ、薬、仕事などに逃避しているのです。そして、その結果、命を失う人もいます。実はそれも自殺の一種なのです。ただ、突然死ぬのではなく、徐々に死んでいくだけなのです。(後略)


他にも私には持病があるが、ここでそれらの記述を引用するのは、止めておく。


もちろんすべてに納得したわけではない。こじつけ、としか取れないところもあるし、精神異常の項にある「自分の幼い頃のことを詳しく思い出し、精神異常の本当の原因を発見しなければなりません」という記述にいたっては、現代の精神医療とは逆行しているとも感じる。


だが、特に自殺、という項において、結構ピンとくるものがあった。

特に最後の方、繰り返しになるが、


この地上で、アルコール、食べ物、ドラッグ、薬、仕事などに逃避しているのです。そして、その結果、命を失う人もいます。実はそれも自殺の一種なのです。ただ、突然死ぬのではなく、徐々に死んでいくだけなのです。


ここは、ずっしりと来た。


日本は自殺大国というが、こういう人たちも加えると、死者のほとんどが自殺になってしまうのではないか? と思えるほどだ。


最後に。この本は、自分の病気の原因はこれだったんだ! これさえただせば治る!と、犯人捜しをするためのものではない。


自分の病気の個所を索引で引き、心当たりのある個所、改善できる個所に線を引き、アドバイスがしっくりときたら受け入れる、ぐらいのスタンスでちょうどいい。病気や生と付き合うためにヒントになる本と言える。


最後に書名と出版社、そしてISBNを記しておくが、amazonへのリンクは敢えて張らない。

安い本ではないので、図書館で読むのがいいと思う。その場合は図書館員にISBNを伝えると、スムーズにいくだろう。


書名

自分を愛して! 病気と不調があなたに伝える<からだ>からのメッセージ


著者

リズ・ブルボー


訳者

浅岡 夢二


出版社

ハート出版


ISBN

978-4-89295-574-7

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