第12話 第一の事件の考察

 第一の事件の流れはこうだ。

夕食が終わったのは夜8時頃

それから各人が部屋に戻っていった

九龍頭が窓の外をちらりと見て、窓から赤い光が洩れていたのはそれから30分後の8時半。

井筒が九龍頭の部屋を訪れたのは、9時10分頃。その頃は灯りが消えていた。

そして桐生の死体を発見したのが9時20分頃。

桐生が柘榴石の間を離れていたのが1時間程という訳だから、8時30分から死体発見までの9時20分が空白の時間となる。


「静代さん、貴方部屋の灯りを点けていた頃、ご主人はどこに?」


「えぇ、あの時間に主人は部屋を出ました。少し酔ったようだから、気分転換に屋敷を歩くと行って……」


「ほぉ、じゃあやはり静代さんは部屋の灯りを点けたんですね?カーテンは?」


「開けておりました」


「なるほど、それじゃあ外が赤く光るわけだ」


 九龍頭は言う。すると待った待ったと浅香源蔵は遮るように言った。


「解るように説明してくれよ、先生」


「我々が泊まっている部屋は、何もかもがその名前を冠した宝石の色で統一されている。赤い光、あれは柘榴石の色だ」


「なるほど。そういうわけですな」


 井筒はうんうんと頷く。


「気分転換と言って、あの人は美晴さんの部屋に向かった。おや?凶器が拳銃というなら、銃声くらい聞こえたでしょうに……」


「あの酷い嵐です。窓をガタガタ揺らす風と雷に混じってもまさか拳銃だなんて……それにまさか拳銃なんて誰も……」


 静代はあっと言うと顎に手を当てて言った。


「主人だわ。あの人、昔戦争で使った旧日本軍の拳銃を護身用に持っていました」


「なんだ、それじゃ決まりじゃないか。その旧日本軍の拳銃を桐生さんから奪ったのが犯人だ。おい、荷物を皆出すんだ」


 強引な口調で浅香は言った。


「ちょっと浅香さん、そりゃちょっと早計すぎやしませんかね?まずは皆さんの不在証明アリバイを訊いてからにしましょうよ」


「何が不在証明アリバイだ! そんなものいくらでも言えるだろう? 誰を信用できるっていうんだ?」


「随分な慌てようだな。アンタ、何か知ってるのか?」


 天羽がぼそりと呟くように言った。


「なんだと?」


。アンタ」


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