第21話 終幕か否か
野薔薇荘で2人目の死人が出た。いずれも無惨に鉛玉に身体を貫かれている。
2人目である飯島美晴はこめかみに銃弾を受けている。だらりと垂れた右手の先には旧日本軍のものと見られる拳銃が落ちている。
井筒警部は遺体に合掌する。それから隠し部屋から水晶の間に移され、遺体には毛布がかけられた。
「これで……終わったんでしょうか?」
浅香民子が訊いた。夫の浅香源蔵が早口でがなり立てるようにして言う。
「この女狐が犯人なんだろう?脅迫なんかするような女は人殺しに違いないんだ」
「ま、今回はこのおっさんの言うことが合っているだろうな」
天羽太一郎が言って、血塗れになった美晴の頭にかかった毛布をちらりと捲って傷口を指差した。
「星のような形をしているだろう?銃口を押し付けて射出すると、こんな傷ができる」
「さすが今里さんの御子息だ。その通り、こんな傷になる事は間違いない」
「こめかみに拳銃を押し当てて引き金を引いたんでしょう。となると、わかりますよね?」
天羽はぐるりと見渡した。九龍頭は首をかしげ、低い声で唸る。
「先生?どうなさいました?」
「右手側……ですよね?」
「ええ、そうですが」
「飯島美晴さんは左利きのはずですよ?一緒に珈琲を飲んだ時、彼女は向かって左に向いていた取っ手を、わざわざ右に回して珈琲茶碗を持ったんです」
「へ?」
「普通、拳銃は利き手で撃つものです。しかしながら今回は違う。これは犯人による偽装自殺でしょう」
蒲生は身震いをして言った。
「そ、それではこの中に犯人が?」
「可能性の話ですが、まぁ……」
九龍頭は頭を掻き毟る。何かを考え、煮詰まってきたときによく彼がやる仕草だ。
「そうなると……また事件の再考が必要になりそうだ。これ以上犠牲者を増やさない為にも……」
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