第二の事件
過去
明らかに、今里太一郎の父親の様子はあの白鷺高原の百合根一族殺害事件の被疑者を逮捕したあの日からおかしかった。
いつもは帰ってくるや威勢の良い声で挨拶をし、たまに子供の為にシベリヤを買ってきたりしていた。それがあれからというもの、覇気が全くといって良いくらいにない。いつも何かうわの空のようだ。たまに熟柿臭いときもある。
そんな父の様子を、思春期の多感な時期である太一郎は冷ややかにかつ心配そうに見ていたのである。
(父さんは、何を見たのだろうか……)
勇ましい父は太一郎の誇りであり、そうなりたいと思う対象であった。
まさか、その父が拳銃自殺するとは思ってもいなかった。精神を病んでいたのであろう。
太一郎は父の拳銃を形見として持つことにした。自らの頭を撃ち抜いたその銃を。
(いつか、全てを暴いてやりたい)
いつか、あの忌まわしい白鷺高原の野薔薇荘に、自らも訪れることを静かに誓った。
父の見た忌まわしいものを、この目で確かめる為に。
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