第11話 事件の後
時刻は夜の9時半になっていた。二階の大広間に集められたのは、従業員である3人を含めた全員である。
事は緊急を要している。何せ一人、美晴は行方をくらましている。嵐の中、この野薔薇荘の中にきっといるはずなのに……
「どうして……」
桐生静代は顔を覆ったままさめざめと泣いている。九龍頭は顎に指を置いたまま、何かをぶつぶつと呟いている。
「解ってるのは、この屋敷に人殺しがいるってことですよねぇ?蒲生さん」
浅香源蔵は言った。蒲生はいやはや、なんとと何度も呟きながらあたふたとしている。
「こんな中、警察は来ないでしょうねぇ、九龍頭先生」
井筒欽也は言った。九龍頭は頷く。九龍頭の頭の中にはあの壮絶な顔をした桐生信行の顔が貼り付いて離れない。
「こうなったら、作家の先生が頼りだ」
天羽太一郎の一言に、九龍頭はとんでもない! と両手をひらひらと泳がせながら言った。
「ばかな! 僕はあくまでも絵空事の探偵小説を書いているだけのただの物書きですよ!まさかそんな……」
言いかけると、九龍頭は続けた。
「しかしながら気になる。なぜ桐生さんは美晴さんの部屋で殺害されていたのか。柘榴石の間から1時間も姿を消していた間、桐生さんは一体何をしていたのか……そして…」
雷がどんと近くに落ちると、眩い雷光が広間を照らし出した。
「桐生さんは何故殺されたのかですよ。何よりも」
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