第13話 客人達の闇

 雷が鳴り響く中、浅香源蔵は脂汗を垂らしながら顔を真っ赤に赤らめている。それを見て、浅香民子がくすっと笑って言った。


「そんなもの、皆さんにおありじゃありませんこと?もちろん、このうちの主人もですがね」


「なっ! た……民子! 貴様っ!」


「婿養子の分際で、でかい顔しないでくださる? 貴方の出自が後ろ暗いものである事くらいばれますわよ」


「民子さん……それは?」


「この人の旧姓は大滝よ。大滝源蔵。15年前の事件の犯人、大滝哲次朗の実の弟よ」


 全員の目線が浅香に向いた。浅香は目を泳がせながら言った。


「そ……それが何だって言うんだ! 私と兄は暫く音信を絶っていた! 無関係だ!」


 九龍頭はまぁまぁと宥めるようにとりなした。


「まぁ、それは頭に置いておきましょう。さっきの話からすると、皆さんに何か秘密があるようですが、今はそれは論点じゃない。でしょ?問題はでしょう?」


 皆は押し黙った。浅香は溜息をつくと、まるで糸が切れた操り人形のようにぺたりと椅子に座り込んだ。


「この時間帯、各部屋への人の出入りがあったかどうか……蒲生さん、お分かりですか?」


 九龍頭の問いに、蒲生は首を傾げた。従業員であるメイドの諏訪可里奈すわかりなに蒲生は訊いた。可里奈はいくらか舌足らずな喋り方で言う。


「ええ、私が客室の方を通りかかったのは多分、8時半をいくらか過ぎた頃だと思います。どなたかは解りかねますが、水晶の間の扉が閉まるのが見えました。身長が高い影が見えましたから、多分、桐生様かと……」


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