第25話 過去の解明
九龍頭は水で口を潤すと、また人懐っこい笑顔を浮かべて続けた。
「さて、15年前の事件はある人物が百合根一族を皆殺しにした事から始まった。きっかけは百合根三郎が一人の婦人を殺害してしまった事でした」
「え?何故?」
「井筒警部、百合根三郎をはじめとした百合根一族は呪わしい一族。生まれながら殺人の病に浮かされた一族でした。あの巷の噂は本当だったのです。可哀想に、その犠牲の一人になってしまったのは大滝哲次朗の妻、ひなさんでした」
浅香源蔵はごくりと咽を鳴らした。
「百合根一族の直接の遺伝子とは関係ない夫人、緋沙子さんはその所行に耐えかね、百合根三郎をはじめとした三人を殺害した」
「えっ?ちょっと! だって死体は4つだったんじゃ?」
「確かに四体です。しかしここでミソなのは、百合根夫人にのみ首がなかった事なんです。浅香さんの話によれば、後ろ姿は百合根夫人と大滝夫人はよく似ていた」
「それじゃ……」
「そうです。あの遺体こそが大滝哲次朗夫人であり、百合根緋沙子は生きていた。百合根緋沙子さんには、姉妹なんていないんでしょう?」
九龍頭は真顔になって訊いた。
「桐生静代さん、いや、百合根緋沙子さん」
静代は無表情でそれを聞いていた。微かに頬を引き攣らせると頷く。
「面白いわ、九龍頭先生。さすが探偵小説の先生。しかし、小説と現実は違うわ」
「ええ、そうでしょうとも。犯人はあなたという事実は曲げられませんがね。あの水晶の間で先に殺害されたのは、飯島美晴さんでしょう?」
九龍頭は話も聞かずに矢継ぎ早に口を開いた。
「飯島美晴さんを殺害したのは桐生信行さんだ。しかしそう仕向けたのはあなただ。きっとあなたは桐生さんに【飯島美晴を殺害する計画を立てた。この屋敷には隠し部屋があり、彼女はそこに隠しておけばいい】と」
「なるほど、桐生信行ならば女である飯島美晴をかついであの部屋に行ける。その後……」
「そうです。水晶の間にて桐生信行さんは妻である静代さんに殺害された。それからあの隠し部屋に拳銃を置いていったんです」
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