第23話 最後の一葉

 九龍頭はまた再び水晶の間に入った。その現場はまだ保存されている。九龍頭は部屋に入り、隅々を眺めながらぶつぶつと呟いている。


「先生?」


 井筒が部屋に入ると、九龍頭は顔も見ないまま、あぁと答えた。明らかに心はここにない。


「僕らは何かを見落としてる、そんな気がしてならない」


 九龍頭は部屋を舐めるように見回す。ふと九龍頭の目線は部屋の真ん中、丁度火が燃えていた灰皿に向けられた。


「紙が燃えた煤ですね」


「えぇ、ん?」


 九龍頭は灰皿を持ち上げると、中の燃えかすをテーブルにひっくり返した。


「先生?何を……」


「やっぱり……そうか!」


 九龍頭は灰皿をテーブルに置くと、井筒を見て言った。


「これが、鍵だったんですよ。井筒警部。僕らは思い違いをしていたんです」


「えっ?なら……」


「謎は全て解けましたよ。全てね」


 井筒はやや興奮したように訊いた。


「本当ですか?」


「えぇ、今すぐに皆さんを広間に集めてください。事は、一刻を争うかもしれませんから」

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