第18話 野生の馬

『2018年2月26日(月曜日)』




主なニュース:

・野生の馬は既に地球上から絶滅していた

・横山大観生誕150年

・ウサイン・ボルトがサッカーチームと契約


「はいどうも、よろしくお願いします」

「DNA分析で分かったんだけども、もう既に野生の馬は地球上から絶滅していたらしいぞ」

「どういうこと? 馬って存在していないの?」

「野生の、な。今いる馬は全部家畜馬で、純粋な野生の馬がいなくなっていた、と」

「でもまあ馬は馬じゃん」

「まあそうなんだけどな。一応野生の馬と思われていた馬の先祖は、逃げ出した家畜馬で」

「逃げ出した馬はもう野生でしょう」

「厳密には違うんだ」

「そんなことより僕は横山大観生誕150年のニュースのほうがトップニュースだね」

「近代日本画の巨匠な」

「そう、近代日本馬(にほんば)の巨匠ね」

「ニホンバってなんだよ、近代の日本の馬か」

「近代の日本の馬の巨匠だよ」

「日本画な、日本の馬の巨匠ってなんだよ」

「要はぐんまちゃん作った人」

「群馬県のゆるキャラ、ぐんまちゃんを作った人じゃねぇよ、横山大観は」

「横馬大観ね」

「山が馬になっちゃってる、馬の遺伝子がだいぶ入ってきてるぞ」

「そんなことないよ、全然馬の話には興味すらないよ」

「じゃあ日本馬ってなんだよ」

「そんなこと言ったっけ?」

「言ったよ、そんな古典的なおとぼけ」

「とにかく僕は横山大観生誕150年のホースのほうが」

「ニュースな、馬を英語でホースになってる」

「今のはちょっとかんだだけだよ」

「本当か? なかなかそっちの方向にはかみづらいけども」

「こっちの滑舌の悪さをなめるな!」

「そんな怒り方、じゃああのすまない」

「分かればいいよ、あと僕が気になっているホースは」

「ニュースな」

「キタサンブラックね」

「ホースで合ってたんだ、いや馬の話題」

「あれ? 馬の話題をするんじゃなかったっけ、時事漫才って」

「多分、今の話題。今は全然キタサンブラックの話出てないから、北島三郎の馬の話出てないから」

「あっ、時事漫才って今の話題ね!」

「知ってるだろ、もう2週間くらい作ってるぞ、時事漫才」

「今の話題ならこれ、ウサイン・ボルトがサッカーチーム契約だって」

「それすごいよな、人類最速の男がプロのサッカーチームに入るって、どこのチームかの発表は明日らしいな」

「ウマイン」

「ウサインな」

「ウマイン……だろうな、サッカーも」

「上手いんだろうな、サッカーも、だったんか」

「ウマイン・ボルト」

「じゃあウサインな、ウサイン・ボルトな、また馬の遺伝子入ってきたぞ」

「おかしいな、馬なんて興味無いのに。ウサイン・馬主の話をしたいだけなのに」

「ついにカタカナが漢字になったな、文字数だけじゃねぇか、ウサイン・ボルトな」

「そうそう、ウサブちゃんね」

「もう馬越えてサブちゃんがやって来ている、もう近くまでやって来ている、ウサイン・ボルトな」

「ウサイン・ボルト、うん、そう、ボルトってマンチェスター・ユナイテッドに入りたいんだよね」

「そうそう、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドのファンで」

「ウマンチェスター・ユナイテッド」

「あぁ、やっぱり馬の遺伝子が入ってきた」

「ウマンチェスター・ユナイテッドとウマンチェスター・シティのダービーマッチ」

「ウさえ頭になければ合ってる、ダービーマッチって言い方するから」

「ウマンチェスター・ユナイテッドとウマンチェスター・シティのダービースタリオン」

「もう完全に馬になっちゃった。競馬のゲーム、ダビスタになっちゃった」

「飯田ビスタ」

「あぁもうダビスタつくった人がつくったサッカーゲームのチーム名を言っちゃった、サッカーに戻ってきた」

「ウサイン・ボルトって飯田ビスタに入るんだっけ?」

「あれはゲームだけのサッカーチームだから」

「あれ、情報が混乱しているなぁ」

「いやまだ情報は出ていない、どこのチームと契約したか発表されてないから」

「でもまあウサイン・ボルトのゴールパフォーマンスはもうあれで決定だよね」

「斜め上を指さすポーズな」

「いや、まつりを歌う」

「それサブちゃんのキタサンブラックが勝った時のパフォーマンス」

「ウまつりだ、ウまつりだ、って」

「サブちゃん、そんな馬に寄せてってなかったよ」

「いやウサイン・ボルトの話をしてんだよ! こっちは!」

「してねぇよ、ずっと馬の遺伝子を組み込んだ話をしてるわ」

「でも野生の馬が競馬に参加したら圧勝だろうね、でもそれも無いのか……ちぇっ……」

「いやついに野生の馬への強い思い出てきたな!」

「野生の馬って独特のカッコ良さがあったのに、家畜から逃げ出した馬だったとは……ヘタレじゃん」

「どんどん出てきた! 野生の馬への思い!」

「それにずっと気付いていなかった人間というのも愚かだよね」

「まあDNA分析で分かったわけだから、そこを攻めるのは、人間を攻めるのは止めよう」

「馬肉食いすぎたかぁ」

「馬肉食う人だったんだ。豚や牛と比べて割と少なめの、馬肉食う人だったんだ、オマエ」

「野生の馬を食いに行くツアーにばっかり参加しなきゃ良かった」

「そんなツアーあったんだ」

「違法のね」

「じゃあもうダメだよ、違法はもう本当にダメだよ」

「まあそれも今考えれば野生の馬じゃなかったのかもしれないね、だとしたら嘘じゃん! クソ!」

「いや違法のツアー参加してるヤツがクソとか言う権利無い、もういいよ」

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