第20話 かむ

『2018年2月28日(水曜日)』




主なニュース:

・色丹島を「しゃこたん」と言い間違う、沖縄北方担当相。

・今日はビスケットの日。

・体が気温の変化を感じると、肝臓に負担がかかるので、肝機能を高める食品を食べよう。

・ウサイン・ボルト、サッカーチームとの契約ではなく、チャリティマッチに出場だった。


「はいどうも、よろしくお願いします。沖縄北方担当相が色丹をしゃこたんと言い間違ったみたいだね」

「まあ似てるからな」

「正直かんだ程度だよね、このくらいの間違いは」

「俺もそう思う」

「僕なんて、隣の客はよく柿……の早口言葉があるけどさ」

「食う客だまでは言えないんだな」

「調子が悪いと、隣の客も言えないもん」

「それはまあ言えなさすぎだけど」

「トナキャクって言っちゃう」

「文字数に違和感を抱かないのか」

「でもかむってそういうことだから」

「まあな」

「そもそも『しこたん』て、とも思うし」

「そもそもの島の名前が」

「そう、四股踏んでいる力士の絵が描かれた短冊か、って思う」

「まあそこの感性は人それぞれだからな」

「七夕に何願っているんだという話だよ、四股踏んでいる力士が何なんだよという話だよ」

「七夕の話はいいよ、オマエの感性の話で留めておけよ」

「あとシコシコ麺の担々麺みたいだし」

「そこはまあ本当に感性は人それぞれだからな」

「七夕に何願っているんだという話だよ」

「それは多分そういう担々麺が食べたいんだと思う、七夕ならば」

「またしゃこたん、積丹島もあるし」

「そうそう、ややこしいんだよな」

「しゃこたんて、蝦蛄たっぷりの担々麺かって思うよ」

「オマエにとって、たんって大体担々麺だな」

「短足でもいいよ、短足の蝦蛄でもいいよ」

「蝦蛄に短足とか足長とかの概念無いけども」

「とにかくそれはかんだ程度だから、目くじら立てて怒るようなことじゃないよね」

「そこは同意だな」

「さて今日は、ビスケットの日なんだってさ」

「ビスケットというのは、2度焼かれたパンという言葉が語源になっているらしいな」

「かみ心地がね」

「そうだな、かんだ感じが2度焼かれたパンじゃねぇか! ということなんだろうな」

「ビスケットというのは、かみやすいよね」

「かみやすいというか、かまないと飲み込めないからな、かたくて」

「いや、ついベスケットって言っちゃう」

「そっちのかむなんだ、いやビスケットをベスケットとかむことは無いかな」

「調子悪いと、さらにかんで、スケベットと、かんじゃう」

「だいぶ調子悪いな」

「別途でスケベな人を呼んじゃうみたいな言葉になっちゃう」

「いやそれはもうやりすぎな感性だ、その感性は否定させてもらうわ」

「そのような言葉になっていませんか……シュン……」

「まさか落ち込むとは」

「今日がビスケットの旬……」

「ビスケットの日なだけで、旬ではない。主に農作物に言う旬とかではない」

「ポケットの中にビスケットを入れて、叩いて2個にして収穫だ!」

「収穫って言わない、粉々になって少し汚いなぁって思うだけ」

「そういう歌もあったじゃないか!」

「でも収穫と歌ってはいなかったはず」

「叩いたビスケットの収穫祭、って歌ってなかったっけ?」

「収穫祭という言葉が入る童謡なかなか無いね」

「かんでしまいました」

「いや勘違い、かむとは言わないから」

「かむ機能を上げないといけません」

「かむ機能ってなんだよ」

「体が気温の変化を感じると、肝臓に負担がかかるから、かむ機能を高めるための食品を食べないと」

「じゃあ肝機能な、肝臓と先に言っといてのかむ機能て」

「ところで肝機能を高める食品って何?」

「知らずに言い始めたんだ。まあネギやニンニク、大根とか大豆がオススメらしいぞ」

「それらを飲むと」

「いやそこはかめよ、かむ推しで今日はきていたんだから」

「いやもう吸うに近いね、その食品は」

「いやいやかむだろ、大豆を豆乳にした場合のみだろ、吸うは」

「焼きネギとか吸うでしょ」

「吸ったらアツアツのネギが喉を焼き尽くすだろ」

「一気に胃まで落とせばいい」

「味わえよ、おいしい食品は味わえよ」

「ニンニクもミキサーで液状にして、鼻から吸う!」

「変な健康法じゃん、鼻から吸うってだいたい変な健康法じゃん、匂いがキツイだろ」

「大根は大根おろしにして、薄めためんつゆと共にご飯とかきこみ吸い!」

「急においしそうになった、最後に吸いを足しただけで基本的においしそうになった」

「やっぱり食品はおいしく食べないと」

「まあそれはそうだな、俺がずっとそう言っていたんだけどな」

「よしっ、肝機能を高めてサッカー選手になります! サッカーの話をします!」

「話の繋ぎ目が酷い、変にかけようとするから何か変な感じになるんだよ、ウサイン・ボルトの話だろ?」

「そう、ウサイン・ボルトがツイッターでサッカーチームと契約したという話さ」

「でも実際はチャリティマッチに出場するという話だったヤツな、肩透かし喰らったよな」

「かみ透かしだね」

「かんではいない」

「いやこれもかんだようなものだよ、ちょっと間違っただけだよ」

「ツイッターでも? 文章だぞ、文章でかむって」

「でもちょっとした文字のミスなんてあるじゃない、ニュースペーパーにもあるじゃない」

「まああるけども、これは肩透かしだよ、やっぱり」

「かみ透かしね」

「かみ透かしって何だよ」

「肩透かしをかんで言っているの」

「じゃあ肩透かしじゃねぇか、もういいよ」

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