第11話 ラッピング

『2018年2月20日(火曜日)』




主なニュース:

・スケートリンクに投げ込むモノはラッピングしないといけない

・都知事「築地に市場つくる気無い」明言

・12月から比べると、3月は

 昼の時間が2時間長くなっているが、気温が上がるのは3月中旬から


「はい、どうもよろしくお願いします。いらないなら欲しいけどね!」

「何の話だよ」

「スケートリンクに花束とかぬいぐるみとか投げ込むけども、いらないなら欲しいけどね!」

「プレゼントだよ、まっとうなプレゼントなんだよ」

「ラッピングのビニール袋でいいから欲しい」

「道路に落ちているビニール袋でも拾ってろ」

「いやでもさ、選手もラッピング外すのいちいち大変だろうから、ラッピングはもらっていいよね」

「ラッピングは重要なんだよ、スケートリンクを汚さないためのマナーなんだよ、あれ」

「じゃあむしろ絶対ラッピングしないとダメなんだ」

「そう」

「ラッピングの代わりにジャムを塗って投げ込むとかもダメだね」

「まあダメだな、液状のモノだとスケートリンクが汚れるからな」

「生ハムはどう?」

「マジで返すと、生ハム自体にも水分が含んでいるから、花束を直で投げ込むのと一緒」

「じゃあ生ハムラッピングのほうがいいね、花束の直よりも」

「両方ダメだって言ってるだろ」

「おいしいじゃん」

「両方ダメなんだって、あと直でスケートリンクにいった生ハム、食べたくねぇよ」

「冷凍調理されちゃったから?」

「何か汚いだろ、きっと」

「スケートリンク舐めたことあるの? お腹でも痛くなったの?」

「したことも、チャンスもない」

「じゃあ味噌ぬって舐めてみろよ!」

「味噌の印象しか残らなくなるだろ」

「というわけで生ハムラッピング、オススメです」

「いやだから生ハムはダメなんだって、水分を含んでいるから」

「ちょっとくらいならいいような気がする」

「危険なスタートだぞ、その考え方。そういう考え方がどんどん大きくなって大事件になるんだから」

「でも生春巻きだったら……」

「もうね、生ハムとボケが一緒なんだよ、名詞が違うだけでボケが一緒なんだよ」

「いや、全く新機軸のボケでしょ、この方向からきたか、くらいの」

「いやもう全く一緒、精密機械くらい一緒だった」

「ありがとう」

「褒めてないから、日本の下町工場はすごい技術ですねという話してないから」

「そう言えば日本の下町築地の話なんだけども」

「言葉の意味無い掛け方しないでいい」

「都知事が築地に市場をつくる気ないって明言したみたいだね、イヨー!」

「あぁ、テンションが名台詞のほうの、名言になっちゃってんな。違う、明らかにしたほうの明言」

「そうそう、そっちだった、でもこれちょっと酷いよね、築地を守るとか言っていたのに」

「まあなぁ、これはちょっと良くないなぁ」

「もうショートとセカンド雇っちゃったよ!」

「何で野球の守備で守るんだよ」

「ゴールキーパーも雇っちゃったし」

「いろんなスポーツの守備的ポジション。いや雇っちゃったってなんだよ、仮に雇うとしても雇うのはオマエじゃないだろ」

「僕が一任されていました」

「どんな嘘だよ、まずスタートからどんな嘘だよ、ショートとセカンド雇ったってなんだよ、ピッチャーも雇えよ」

「ピッチャーは高かったから断念」

「ショートとセカンドとゴールキーパーも高いわっ」

「でも実際さー」

「まあ築地を守るといっておいてな」

「いやでも実際さー、ピッチャーは高いわけよ」

「その話もういいから! 築地を守ると言っておいてつくらないを明言ね! 含みを持たせておいて! 期待させておいて!」

「すごい怒っているなぁ」

「今はオマエにだよ!」

「あっ、僕にかぁ」

「でも市場をつくらないだけで、他の何かをつくるのかね?」

「スケートリンクとか?」

「それはないだろうけども」

「ラッピングした冷凍マグロを投げ込んで」

「築地スケートリンクの場合はもうラッピングしなくていいわ」

「都知事の部屋にラッピングした冷凍マグロでも投げ込む? 足元狙ってさ」

「襲撃事件じゃん、それは止めたほうがいい」

「でもちょっとくらいならいい気が」

「もうスタートから大事件だから、都知事の足元狙ったらもう大事件だから」

「これが俺たちの春だ! と言いながら投げたいよね」

「いいよ、投げちゃダメなんだから投げる時の話しなくて」

「築地に春が来るのはまだ先みたいですけども、現実の春はもう春ですね」

「繋ぎ目が雑だな、素人のはんだこてだな」

「12月から比べて3月は昼の時間が2時間長くなっているんですって……長くなっているのは夕方の時間だろ!」

「人それぞれの見解だから何が正解とかはない」

「でも実際温まるのは3月中旬からって……夕方はどうだ!」

「自分で調べなさいとしか言えない」

「早く春は、ラッピングした日光を投げ込んでほしいよね」

「光をラッピングとか出来ないから」

「これが俺たちの春だ! と言いながらさ」

「まあそれはそうなのかもしれないけど、いや違うわ、台詞いらねぇわ」

「夕方の情報を言いながら投げてもらうのは、どうだろう?」

「まず春に口は無いから、もういいよ」

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