第16話 危険

『2018年2月18日(日曜日)』(1)




主なニュース:

・高木菜那選手がスピードスケートのマススタートで金メダル

・カーリング日本勢初のメダル獲得

・カジノ入場料が安すぎるという意見が続出


「はいどうも、よろしくお願いします。スピードスケートで金メダル! やりました!」

「高木菜那選手がマススタートでな」

「そのマスタードって何なの?」

「ちょっと辛めの黄色いソースじゃない、マススタートというのは種類の名前」

「どういう競技だったの?」

「同時に同じスタートラインから走り出す競技で、結構危険なんだよ、接触からの転倒とかもあるから」

「マスタード小さじ1かけたフランクフルトとどっちが危険?」

「断然マススタート。マスタードの小さじ1は一番おいしいラインか、ちょっと足りないくらい」

「マススタートってヤバイね!」

「そのマスタード、マジで足りないくらいだからな」

「でも危険ってどう危険なの?」

「転倒があるってことは、人のスケート靴の刃が当たる可能性もあるってこと」

「あの足の日本刀が?」

「その表現はきっと正しくないけども、まあ危ないことは分かっているようだな」

「じゃあもう布とかビリビリじゃない、電気で」

「いや電気は発生しないけども。でも布のところは大丈夫、特殊な素材で、刃で切れないようになってるから」

「特殊な素材ってファンタジーRPGじゃないんだから」

「現実世界にもあるから、特殊な素材って」

「スライムを煮詰めてつくったの?」

「ファンタジーRPGでもそんなスライム煮詰めないだろ、普通の、科学技術でつくった特殊な素材」

「科学技術ってすごいね、本当にこの調子なら宇宙に行けるよ」

「いやもう宇宙には行ってるわ」

「だとしたら、だとしたらすごいね」

「まだ半信半疑だけどもじゃねぇよ、だとしたらじゃなくて、もう行ってるんだよ」

「でもまあその特殊な素材パワーで金メダルと」

「それは違う、高木選手の技術と駆け引きで金メダル」

「どうした! 特殊な素材!」

「あんまり特殊すぎるとドーピング的な扱いになるから、適度に特殊でいいんだよ」

「そっか、あくまで人間のオリンピックだもんね」

「オリンピックってまあ人間しかやんないけどな」

「馬術もあるでしょ!」

「馬術も人間目線の言葉だし、人間が扱う馬の術だし、冬季にはやらないし」

「否定ばっかりで、ちょっとは肯定して分かり合おうよ!」

「漫才なんだからいいだろ、せめて漫才は人の言うことを否定させろよ」

「いろいろつらいんだね、いいよ、否定しても」

「いや漫才だから、僕をストレス発散に使ってもいいよ、じぇねぇんだよ」

「でもストレス発散には辛いものの一気食いもいいよ、マスタード小さじ1とか」

「だからマスタードの小さじ1は何にしても少ないんだよ、メダルで言えばカーリングもメダル、日本勢初のメダル」

「カーリングも危険そうだよね」

「う~ん、そうでもないんじゃないかな」

「あの石を足元狙って投げるわけだから」

「足元狙って投げているわけじゃねぇよ、的の中央とかを主に狙ってるんだよ」

「えっ、あのモップ持ってる人の足元狙ってるんじゃないの?」

「モップ持ってる人たちは味方だから」

「そうだったんだ! じゃあ自分を狙ってきた石の周りをモップでこすって、石に嫌がらせしてたわけじゃないんだ」

「石に嫌がらせってなんだよ、ストレス発散的なヤツじゃねぇよ」

「じゃあもう全然危険じゃないね」

「そう言っちゃうとちょっと違うけど、氷上で何やってんのがやって来るけども」

「いやもう水飲み場で水飲んでるのと同じくらい安全」

「いやいや、氷上は滑って転びそうになるでしょうがやって来る」

「むしろこっちのほうが危険、カジノ入場料が安すぎるという意見が続出ね」

「急にカジノの話」

「一律2千円でいいでしょ! 安すぎるって金持ちの考え方だよ! 危険だ!」

「カジノの話は割かしどうでもいいな」

「まず入場料なんていらないくらいだし!」

「カジノに対して、思いが熱いな」

「2千円払わずスライディングで入場してやるよ!」

「まあそれのほうが危険、止められ怒られ怖いことになるから」

「じゃあ首で2千円挟んでスライディングして入場してやるよ!」

「払っちゃった、怖くなって払っちゃった」

「カジノってよくよく考えたら怖いなって、思った」

「そんな怖いところに入場するの? オマエ」

「僕なりの金メダルを得たいんだ」

「全然うまくない、割と悲しいくらい」

「悲しいってなんだい!」

「流れからいくと、台詞が読めて、だいぶ発想が貧困なところが」

「君の足元にカーリングのストーンを投げてやろうか! よし! 氷上へ移動だ!」

「投げられるために氷上へ行かねぇよ」

「というかそんなに入場させたくなかったら、いっそのこと入り口を氷上にすればいい」

「もう全然意味が分からない、スケート靴慣れしている人たちは入りたい放題だろ」

「とにかく入場料なんて危険だよ! 絶対その払った入場料分、稼ごうとしちゃうからさ!」

「まあ泥沼だな、入場料が増えれば増えるほど」

「あっ、入り口、泥沼にする?」

「じゃあ金持ちとか来なくなるわ、もういいよ」

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