新機能とそれぞれの関係

第9話

 この日梶原は各都道府県ごとに行われる新技術説明会に来ていた。同じ区役所の不可視物管理課からは同期の根元ねもと由紀ゆきと、今年新卒で新設されたばかりの不可視物管理課に配属された木下きのした幹鷹みきたかが来ていた。


 不可視物管理課には若い職員が多い。これは業務の内容からスマートフォンや最新機器を扱えることが前提にあったからだ。

 中高年でも使える者もいるが、それでも圧倒的に若い世代のほうが扱える者は多い。


 今日行われる新技術説明会は不可視物管理課の業務で新しく導入される新技術についての説明会で、開発に関わった研究者が直接その技術について説明してくれる。


 ちなみに本来加藤と梶原の二人がこの説明会に出席する者に抜擢されていたが、

「加藤と二人は勘弁してください」

 と梶原が懇願し今回のメンバーになった。加藤自信はというと、

「別にどっちでもいいですよ」

 と軽く流していた。


「いやぁ僕新技術説明会とか初めてなのでわくわくします! どんなのなんだろう?」


 木下が目を輝かせながら、説明会が始まる前の講堂の席で興奮した様子を見せる。短めのウェーブがかったショートの髪型で、身長は160cmぐらいと男性にしては少し低い。


「おっ! 若いのは元気がいいねぇ。お姉さん好きよそういうの」


 木下の反応を見てニヤニヤと顔を歪ませる根元。こちらは少し長めの髪をヘアピンで後ろに留めている。身長は木下より少し高いくらいで、眼鏡をかけている。


「梶原は初めてではないんだっけ? 説明会来るの」


「あぁ。二度きた事がある。前回の説明会で発表されたのは俺が今つけている時計形のウェアラブル端末だったな」


 梶原の返答に、木下が食いつく。


「二度って今日合わせて三回目だから、全部来てるってことじゃないですか!」


「そうなるな」


 不可視物管理課が発足されたのは半年ほど前になり、この説明会はまだ二回しか行われていない。梶原は志願して二回とも出席している。


「梶原ってこういう最新技術とか好きなの?」


「あぁ。そうなんだよ。とりあえず最新の技術が出たら、触れてみたくなる。まぁその後それを使うかどうかは、合う合わないによるんだけどな」


 顔を綻ばせる梶原。それをふーんと言いながら眺める根元。


「何か梶原がそういう風に楽しそうにするの見るの、はじめてかも」


「そうか? わりとウキウキしてる時はあるぞ?」


 梶原に笑顔を向けられて根元はまじまじと見つめる。そして机の下に手を入れ、椅子に座っている梶原の内腿をさすり始めた。


「こ、こらお前なにしてるんだ。や、やめっ」


 慌てて静止する梶原。思わず体がビクンと反応してしまったが、机の下で起きていることなので周りにはバレていない。


「いや何かちょっとムラッと来ちゃって」


「木下、ちょっと席を俺と変わってくれ」


 講堂の席が三人席で、真ん中が梶原だったため、端のほうに座っていた木下と席を交換すると、根元が手を出せなくなる。


「別に良いですけど……」


 梶原と木下が席を交換し、梶原にちょっかいを出せなくなり残念そうにする根元。


「えぇー良いじゃん別に減るもんじゃないし」


「おっさんだぞその言い方……」


 ため息を吐く梶原。不服そうな根元。


「まっ良いか。変わりに木下触ろーっと」


 ビクンと体が反応する木下。どうやら梶原と同じように触られているようだ。


「根元さんやめてください……」


「やだぁ。アレ?」


 触りながら木下と目をあわせようとする根元。目をそらす木下。


「木下君やい。何か股間のほうが膨らんでおるぞ?」


「……根元さんやめてください」


 顔を赤らめながら目をそらす木下に、気を良くした根元はやだぁと返す。根元の興味が完全に木下に移ったようでほっとする梶原。


「根元は甲種だな」


 そして梶原の中で根元は甲種(害があるもの)と認識され、加藤とおなじカテゴリに分類された。これからは出来るだけ仕事で一緒にならないようにしようと決めた。


 そして説明会が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る