ネノンの童話

鈴代なずな

ネノンはそのまま転がって、壁にぼふんっとぶつかった。

第1話

■1

 ネノンは言うほど元気じゃないけど、それでも元気な女の子。

 今朝もうにうに起きてから、着替えもせずに遊び始める。それくらいには元気な子だった。

 丸っこい顔、丸っこい目。手足が短いせいで、身体まで丸っこく見えてしまう。白い髪は少し短くて、いつも少し跳ねている。これは遊び相手のせいで、自分のせいとはちょっと違った。

 その遊び相手は、家の中にいる。

 丸くてふわふわした布の家。夜になると、赤くて丸い布が明るく光る。布だけどぴかぴか元気に光る。そんな家の中に、遊び相手はいつもいる。

「今日も遊ぼー」

 それは白くて丸い、綿のようなもの。いつも「ぽんぽん」と言いながら跳ね回るから、ネノンはそれをそのまま『ぽんぽん』と呼ぶことにしていた。

 安直だけど、ぽんぽんも気に入っているはずだ。「ぽんぽん」以外は喋らないけど、名前を呼ぶと元気に跳ねる。元気すぎて髪に絡まってくるのは少し困りもので、髪が跳ねるのもそのせいだけど、この家にはネノンとぽんぽんしかいないのだから、きっと気にしなくてもいい。

 そうして遊び場にしている広間を、ぽんぽんたちと一緒に飛び回って踊っていると、足にこつんと何かが触った。それは家の天井から伸びている、金色をした鉄の管。サックスほどではないけど、出口がくるんと丸まって、滑り台のようにも見える。

 ネノンはまだ子供だから身体も小さいけど、しゃがんでも入れないくらいの大きさをしている。それが五本も家の中に生えていたのだ。

 だけどそんなもの、ネノンは今まで見たことがなかった。

「中に何かあるのかな?」

 恐る恐る、コンコン叩いていてみてもわからない。中を覗いてみても真っ暗でわからない。ぽんぽんは登っていこうとしたけど、滑ってすぐに戻ってきた。ピカピカに磨いてあるのだ。

「うーん」

 ネノンは少し考えて、

「外に行けばわかるかな?」

 ぽんと手を打ち、閃いた。

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