第19話

 ころんっと管から転がり出て、ぼふんっと布の壁にぶつかる。

 それも前と同じだった。出てきた場所ももちろん同じ、ネノンの家だ。

「ま、またー?」

 ちょっと不満そうに言いながら、逆さまの体勢から元に戻る。

 そうしてよくよく見れば、前とは少しだけ違っていることがわかった。

 いや、違っているけど同じことだ。ネノンは残り四本になった管の一番端っこから出てきたと思ったのだけど、自分の正面にはまた管がなくなって、ただの壁になっている。そして残りの管も、三本に減っているのだ。

 だからなんだと言われたら、ネノンだってさっぱりわからなかったけど。

 そしてぽんぽんたちは相変わらず、おかえりと言うように飛び跳ねていて、その数はまた増えているように見えた。

「うーん」

 そこでネノンはちょっとだけ考えた。これってひょっとして、大人になるたびにこうなるんじゃないのかな?

 つまりネノンがいいことをしたかどうかのテストみたいなもので、それに合格したらこうやって家に帰ってこられるのだ。そしてそのたびに、ご褒美としてぽんぽんが増えてくれるのだ。

 そうじゃなくても普通に家に帰ってこられるのは、いいとして。

 なんとなくだけど、ネノンはきっとそうに違いないと思った。

 だってこの前も、今日も、とってもいいことをして、大人になれた気分だったから。

「わたし、ちゃんとできたもんねっ?」

 ぽんぽんたちに尋ねると、みんな元気に跳ね回って踊り出す。

 ネノンはやっぱりそれに嬉しくなって、みんなと一緒に踊り回った。

 地面の奥から近付いてくる、蛇が這いずるような音も、ひょっとしたら一緒に踊りたがっていたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る