第12話
「おい、何してんだ!」
「はへっ!?」
驚きながら、ネノンは振り向いた。
そうしたのはもちろん、声が自分の後ろから聞こえてきたからだ。だけどネノンは、すぐに謝って逃げ出したりはしなかった。
「あれ?」
きょとんとして、首を傾げる。そこにいたのは、ネノンが想像していたような、小屋を管理していて悪戯な子供を叱る怖い大人の人ではなくて、自分と同じくらいの男の子たちだった。
それも、よくよく見れば前にどこかで見たことがある。四人組の男の子。
いっぺんに見たから、みんな同じ顔に思えてしまう。でもみんな少しずつ違っている。
ひとりは黒い短髪で、真ん中に立っている強気そうな子。ひとりは髪の毛を剃り上げた坊主頭の子。もうひとりはスポーツ用の帽子を被っていて、最後のひとりは坊主頭で帽子を被っているけれど、鼻とおでこに絆創膏が貼ってあった。
みんな冬なのにTシャツと半ズボンで、肌を赤くさせながらも寒そうにはしていなかった。
ただ、不審そうにネノンの方をじっと睨んでいる。
ネノンはそれに少し怖気付きながら、それでも少し考えて。
「あ!」
と急に思い出した。
いつだったか、街ですれ違った男の子たちだ。ネノンはそれを追いかけて森の中に入って、迷子になってしまったのだ。
それでネノンは納得したけれど、男の子たちは彼女が急に「あ!」と言うから、少し驚いたらしい。余計に不思議そうな目をして、真ん中の子が言ってくる。
「お前、誰だ? この辺じゃ見かけないよな」
「え、あ……うん。わたし、ネノン。丘の上に住んでるの」
「ふぅん。なんか変な名前だな」
おっかなびっくり名前を言うと、男の子は首を傾げながら頷いた。ネノンにしてみれば、変な名前と言われたのは少しショックだったけど。
だけどそのショックをどうにかして、四人の名前を聞くより早く、真ん中の子が言ってくる。
「ところでお前、ひとりなのか?」
「う、うん。町の中を探検してたの」
緊張しながら頷くと、次は隣の、坊主頭の子が声を上げた。
「じゃあ丁度いいじゃん。オレたちと遊ぼうぜ!」
「え? えっと」
ネノンは急に言われて、少しだけ戸惑った。知らない子に、急に一緒に遊ぼうと誘われることなんて、今までなかった。そもそも他の子と遊ぶことなんてなかったから。
一緒に遊びたい、でも少し怖い、それに緊張するし、何か失敗しちゃったらどうしよう。
色々考えて、ネノンは困ったけれど、男の子たちを見ると、みんなニカッと笑っていた。
「いいの?」
「いっぱいいた方が楽しいだろ?」
「それに昨日、新しい秘密の場所見つけたんだぜ!」
「他の奴らに教えたら盗られちゃうけど、お前は初めて見る奴だしな」
つまり男の子たちは、その場所を自慢する相手が欲しかったらしい。ネノンもなんとなく、そのことには気付いたけれど、自慢されるのは嫌じゃなかった。それに自分もそこが気になったし、なにより他の子と遊ぶというのが初めてだから、嬉しかった。
「うんっ。一緒に行きたい!」
緊張したけど、元気に頷く。すると男の子たちも嬉しそうだった。
「じゃあ早く行こうぜ! こっちだ!」
先導するように真ん中の子が走り出して、他の男の子たちが騒ぎながらそれに続く。
ネノンは一度だけ水車小屋の方を振り返ると、窓を塞ぐ木の隙間から赤いガラスのような目が覗いているのに気付いたけれど、すぐにみんなを追いかけた。
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