夢見る魔王

万卜人

 少女は夢を見ていた。

 そこは見渡す限りの花畑であるようだ。

 色とりどりの草花が、春の日差しの中満開の花を咲き誇っている。

 そこに少女はひとり座り、花輪を編んでいる。

 ひとつ作り、じぶんの髪の毛に乗せた。

 と、一羽の蝶がひらひらと飛び回り、頭の花輪に停まった。はたはたと羽根をはためかせ、花の蜜を吸っているようだ。

 うふふ……少女は楽しそうに笑う。

 そこにもうひとり。

 少女と同じくらいの年頃の少年が、じっと彼女を見守るように立っている。

 少年の顔はよく判らない。ただきちんとスーツを着込み、少女を見守っているようにひっそりと立っている。

 霞にぼやけているようで、よく見知った顔のはずなのに、顔立ちがよく判らないのだ。

 いらっしゃいよ……少女はじぶんの座っている横を手でたたいた。そこへ座るよう命令している。

 少年はひそひそと足音を殺すように近づき、そっと少女の横に座った。

 あげる!

 少女はじぶんの頭から花輪をとり、少年に手渡した。

 少年が受け取ったのか、よく覚えていない。

 そこで夢はおわったのだ。

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