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-…


「……くん、…はらくん、柿原くん!」

「うわっ!」


荒げられた声が聞こえ、慌てて飛び起きる。側には白いワンピースを見に纏った向日さんがいた。

どうやらここで寝転んで、そのまま寝てしまってたみたいだ。


「…向日さん、何でここに?」

「早めに目が覚めたから、散歩でもしようかなって来てみたら人が倒れてて、近づいてみたら柿原くんで…し、死んだのかと」

「…心配して、起こしてくれたの?」

「…っ! しっ死んでたら、第一発見者はあたしになっちゃうし、そうなると、殺人の容疑がかけられるかもしれないし…」


森山さんの話を聞いた後だからだろうか。彼女は俯いて仏頂面になっているが、決して機嫌が悪いわけではなかった。

これが彼女なりの、照れ隠しだったのか。


俺は彼女の頭に手の平を乗せた。


「心配してくれて、ありがとう」


彼女は顔を上げた。きょとんと驚いた顔をしている。けれど、決して払おうとはしなかった。

俺は彼女の頭から手を離し、海の方を見た。


「あ、日の出だ。今何時?」

「今は朝の5時30分くらいだと思う」


彼女は俺の横に座り、同じように海を見た。日が昇り始め、徐々に辺りが明るくなってくる。


「なんか、…ひまわりみたいだね」

「えっ!?」

「え? …あっごめん、えと、向日さんの事じゃなくて、あの、花の方のひまわり!に、似てるなーって。日の出のあの日が伸びてる所とか、花びらっぽいなーって…俺何言ってんだろ」


急に恥ずかしくなり、慌てて弁解をする。彼女が“ひまわり”って呼ばれている事をすっかり忘れて、突然呼んだみたいになってしまった。

きっと照れ隠しではない仏頂面をしているのでは、と彼女の方を見ると。


彼女はただ真っ直ぐに朝日を見ていた。


「…あたしの名前の由来、“ひまわりみたいに、光に向かって行って欲しい”って意味が込められてるんだって。なんか急に思い出しちゃった、えへへ」

「…っ」


この笑顔は、昨日までにはなかった笑顔だ。


「…綺麗だね」

「え?」

「…あっ、えと、ひっ日の出が!」

「ああ、うん…日の出か」

「……」


日が昇るのを、二人で見続けた。どこかで山下たちも見ているのか。


また、新しい一日が始まる。





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