p.18
---…
-…
「……くん、…はらくん、柿原くん!」
「うわっ!」
荒げられた声が聞こえ、慌てて飛び起きる。側には白いワンピースを見に纏った向日さんがいた。
どうやらここで寝転んで、そのまま寝てしまってたみたいだ。
「…向日さん、何でここに?」
「早めに目が覚めたから、散歩でもしようかなって来てみたら人が倒れてて、近づいてみたら柿原くんで…し、死んだのかと」
「…心配して、起こしてくれたの?」
「…っ! しっ死んでたら、第一発見者はあたしになっちゃうし、そうなると、殺人の容疑がかけられるかもしれないし…」
森山さんの話を聞いた後だからだろうか。彼女は俯いて仏頂面になっているが、決して機嫌が悪いわけではなかった。
これが彼女なりの、照れ隠しだったのか。
俺は彼女の頭に手の平を乗せた。
「心配してくれて、ありがとう」
彼女は顔を上げた。きょとんと驚いた顔をしている。けれど、決して払おうとはしなかった。
俺は彼女の頭から手を離し、海の方を見た。
「あ、日の出だ。今何時?」
「今は朝の5時30分くらいだと思う」
彼女は俺の横に座り、同じように海を見た。日が昇り始め、徐々に辺りが明るくなってくる。
「なんか、…ひまわりみたいだね」
「えっ!?」
「え? …あっごめん、えと、向日さんの事じゃなくて、あの、花の方のひまわり!に、似てるなーって。日の出のあの日が伸びてる所とか、花びらっぽいなーって…俺何言ってんだろ」
急に恥ずかしくなり、慌てて弁解をする。彼女が“ひまわり”って呼ばれている事をすっかり忘れて、突然呼んだみたいになってしまった。
きっと照れ隠しではない仏頂面をしているのでは、と彼女の方を見ると。
彼女はただ真っ直ぐに朝日を見ていた。
「…あたしの名前の由来、“ひまわりみたいに、光に向かって行って欲しい”って意味が込められてるんだって。なんか急に思い出しちゃった、えへへ」
「…っ」
この笑顔は、昨日までにはなかった笑顔だ。
「…綺麗だね」
「え?」
「…あっ、えと、ひっ日の出が!」
「ああ、うん…日の出か」
「……」
日が昇るのを、二人で見続けた。どこかで山下たちも見ているのか。
また、新しい一日が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます