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彼女と郁也は二人で荷物番。

その他は少し離れて広い所に行き、円になってビーチバレーを楽しむ。


俺の右隣には鮎川さんがいた。そして向かいの山下越しに俺たちのパラソル、つまり彼女と郁也の様子が伺えた。

二人は思いの外楽しそうに話している様子。


すると郁也に視線を向けていたはずの彼女の視線が、不意にこちらのバレーチームに向いた。彼女と目が合った気がして、俺は慌てて逸らしてしまった。

顔はボールに向け、目線だけパラソルに戻してみる。


「(んな…っ!?)」


彼女が郁也に耳打ちしているではないか。そして郁也も笑ってはいるが、少し困ったような笑顔をしている。

もしかして、俺が二人を見ていたのがバレたのか。バレーもやらず自分たちの事を見ていて、気持ち悪いと思われたのか。それとも、


「(彼女は郁也に、惹かれ始めてる…)」


そう思った瞬間、心臓がどくんっと鷲掴みにされた気がした。夏の日差しは暑いはずなのに、冷や汗が垂れてくる。

郁也に惚れるのは仕方ない、人それぞれだ。ただそれが何故よりにもよって、彼女なんだ。女の子はこんなにいるのに、何故惹かれるのは君なんだ。


「(何で、俺じゃないんだ…)」


何も出来てないくせに理由ばかり追求する。

そんなのいくら考えたところで答えなんか出るわけない。…いや、唯一無二の答えがあるか。


初めて夢の中で会った時から、


「(俺は彼女が、好きだったんだ…)」


変な恋の始まり方かもしれない。それでも、運命を感じざるを得ない。あの時惚れた君がそこにいる。なら、もっと近づきたいと思うのは普通じゃないか。


今まで好きになった子はいた。

でも、自分から動けずいつも何もしないで終わっていた。何もしなければ、終われることを知っていた。


傷付かなくていいじゃないか。-傷付くことを恐れてたら動けない。


向こうから来るかもしれない。-何もしてない奴の元にそんな都合良く来るかよ。


今回も諦めたらいい。-じゃあいつまで、俺は諦め続ければいい。俺は変われない。


「…っ俺、郁也と荷物番交代してくる」


俺は二人の元へと歩き始めた。





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