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「おい、これどういうことだ」

「…まあいいじゃねえの、人生潤いも必要ってことで…」

「突然潤わされてこっちは状況が把握できねんだよ」

「それは裏を返して喜んでるってことでいいのかい、君。そうとしか捉えられないよ」


郁也はがっと俺の首に腕を回し、より近くで話してきた。


「君さあ、もっと周りに目向けなさいよ。知ってる? 街ですれ違う女性が一度君をちらっと見てること。男の俺から見てもイケメンなんだから」

「は? 何言ってんの。郁也の方が格好いいよ」

「俺を口説いてどうすんだ! 今日口説くのは目の前の女子、おーけい?」

「…まじか」


すなわちこれは海で行われるというだけの“合コン”だった。男同士で一夏の青春をするのかと思いきや、そこに一気に女子が加わった。中学卒業以来まともに女子と会話なんてしていない。

何故この場に俺が選ばれたんだ。


それから、もう一つ。正直この状況より驚いた事があった。


「じゃあ、俺たちから自己紹介するか。佐山男子高2年の山下太一たいちです!」


一人ずつ自己紹介していき、俺も「同じく2年の柿原正樹です」とだけ言った。

そして女子、山下と最初に話していた彼女は森山さん。どうやらこの二人で今回の海合コンを計画したらしい。

そして女子の自己紹介も進み、俺は最後の一人に緊張が走った。


「同じく、2年の向日むこうあおいです。よろしくお願いします」

「漢字をそのまま読むと向日葵ひまわりになるから、私たちは“ひまわり”って呼んでるんだ」

「へえーすごいね!」


彼女はすぐさま俯いてしまった。しかし、俺は彼女の自己紹介中、ずっと彼女を見ていた。

みんなが水着なのに対し、一人だけ白いワンピースを纏っていた。そして印象的な、人形のように整った顔立ち。


「(夢の中の、あの子だ…)」


激しく胸が脈打つ。ドクドクと、周りに聞こえるんじゃないかってくらいうるさく体に響く。

現実にいる子が、しかも出会った事もなかったのに夢に出てくるなんてありえるのか、俺は彼女から目が離せなくなっていた。





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