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「そろそろ戻ろうか」
「じゃあ私もバタ足で手伝うね」
鮎川さんは浮き輪に掴まり、岸へ向かってバタ足させる。俺は来た時同様に紐を引っ張って岸へと戻る。
「(だんだん水温が上がって来た気がする、水も浅くなってきたし…)」
「……」
―ツーっ
「!? っな、何今の!?」
「あ、ごめん。柿原くんの背中見てたら、なんかなぞりたくなっちゃって」
「びっくりしたー、めっちゃ心臓ばくばくしてる」
「ほう、柿原くんは背中なぞられるのが弱いのか。覚えとこ」
「いや誰でも急にされたらびっくりするって!」
「あはは!」
鮎川さんがまたしても可愛らしい笑顔を見せる。触られた瞬間は何がどうなったか分からなかったが、首の下ら辺から縦に指でなぞられた。そんなことをされたのなんて、もちろん人生で初めて。
彼女がどういう意図でそんなことをしたかは分からない。
“なんかなぞりたくなっちゃって”
急にそんな風に思うことがあるのだろうか。
一度パラソルに戻り、休憩する。俺たちが戻ってくると、そこには向日さんと郁也がいた。
俺は原田と交代して、いつの間にか原田と郁也が交代していた。
「(なら、俺が交代したのに。って、沖にいたから無理か)」
やはり彼女と郁也が二人になるのはどうしても気に食わない。とはいえ、何をどうすることも出来ず。その後すぐに浅見と女の子が一人、一緒に帰って来た。
俺はシートの端っこへ行き、横になった。さすがに海から上がったら疲れが出てきた。ただ目を瞑っていたつもりだったが、いつの間にか眠ってしまった。
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