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みんながいる所に戻ると、何故か郁也と森山さんがいた。珍しい組み合わせだ。

俺は郁也の隣に座り、彼女は森山さんの隣に座った。「ミキちゃん食べる?」とフライドポテトを差し出し、森山さんが食べていた。


その光景を見た郁也が、俺のフライドポテトに目を付けた。


「くれ!」

「やらん」

「何で!? こっちは仲良く食べてんじゃん!」

「冗談だよ。…一番短くて細いやつにしろよ」

「正樹くん冷たいー」


郁也は短いながらも、芋感ぎっしりの太めのポテトを持って行った。


「山下は?」

「近くのコンビニに行った」

「ふぁっそー(あっそう)」

「芋食いながら答えんな、聞いてきたくせに」


残りのポテトを食べていると、海へ行っていた浅見たちが帰って来て、結局山下以外の全員が揃ってしまった。成り行きとはいえ、またぼっち。

コンビニに行っていることが分かっているので、誰も心配はしていない。


と、数分後に山下が手に袋を持って帰って来た。


シートの上に座り、袋から割り箸を取り出す。そしてそれを半分に割り、油性マジックペンで何かを書いている。


「じゃーん! これからチーム分けして、ビーチバレー大会を挙行致します!」


山下は割り箸を目の前に突き出してくる。そこには1から5までの数字が書かれていた。ちょうど人数は男女比が合っている。

まずは女子たちが山下お手製のくじを引く。それぞれ番号を確認したら覚えておいて、今度は森山さんに集める。じゃらじゃらと数字が見えないようにくじを混ぜ、「はい、引いて」と差し出してきた。


適当にくじを引き、番号を確認する。俺は5番だった。


「ほんじゃあまず、1番誰ー?」


男女一人ずつ手を挙げる。向日さんと郁也だった。

俺の淡い希望は呆気なく散っていった。


「(それにしたって、よりにもよって郁也とは…)」


神様は郁也と彼女に結ばれてほしいのか。そう思うと悲しくなってくる。


2番からペアを確認していき、3番に森山さんと原田ペアとなり、山下も見事に森山さんと離れた。自分からくじを提案した手前、文句なぞ言えるはずもなく。

しかし嫌そうな顔をすると相手の子に失礼だからと必死に空元気でいる。今回の幹事なだけあってさすがだ。


そして5番、ここまで来ると呼ばれてない人同士がペアとなる。俺のペアは、


「柿原くん、よろしくね」

「うん、よろしく」


鮎川さんだった。


昨日の花火の一件以来、言葉を交わしたのはこれが初めて。

鮎川さんは特に昨日と変わった様子もなく、「頑張ろうね」と声をかけてくれる。俺も彼女に気を遣わせてばかりではいけないといつも通りに振る舞う。


そして、ペアの代表がじゃんけんをして対戦相手を決める。平等になるようにと総当たり戦にする。


ネットなんて立派なものはないから、木の枝を真ん中に置き、相手コートにボールを返す時はあまり極端に低すぎないようになど、自分たちなりに曖昧ではあるけどルールを作った。


一回戦目は、郁也ペア対山下ペア。

次に対戦するペアはパラソル内で荷物番兼待機。


俺と鮎川さんは、中央に並んで座って審判をする。といっても、主に得点を数えるだけ。得点は先に10点取った方が勝ち。


「向日さん頑張ろうね」

「うん」


「おうおう郁也、お前らには負けねえぜ!」

「山下くんすごい気合い入ってるね」

「あたもうよ! てやんでい!」


山下のテンションがついにおかしくなった。何故江戸の人になる。

という突っ込みをしようか迷ったが、きっとこの先こいつのボケはまだまだ出てくるだろう。いちいち突っ込んでたら時間がもったいない。


それに、


「(あまり郁也と彼女が二人並んでる姿は、見たくないな…)」


どうにか早く試合が終わることを祈り、スタートの合図をした。


彼女たちは敵同士ではあるが、お互いに笑いながら楽しくやっている。郁也も楽しそうだ。山下は一回転してレシーブをするなど、むだな動きが多い。

ただ、普通に面白かった。


審判をしながらも、試合の光景を楽しく見ていられた。





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