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全員戻って来て、片付けを始める。海の家でシャワーを借りて着替え、一度それぞれの宿泊先に戻った。俺たちの方は朝食はあるが夕食がない。これが格安の理由でもある。
ここまでに来る途中に見つけた食堂みたいな所で夕食を済ませ、花火は7時30分から始める。その前に、重大なことがある。
「さーいしょーはグー、ジャンケンポン!」
「ぐわ~っ! 幹事の俺が買い出しかよ…!」
「その間に場は盛り上げとくから安心しなさい」
「何だとー!」
「ジャンケンで決まったんだから仕方ねえだろ」
「くっ…」
花火の買い出し係、2名-山下、柿原
待ち合わせの海に待機、3名―浅見、原田、榊
どちらでも構わないが、山下と買い出しとかはちょっと荷が重い。バラエティパックを買えばいいと思うのだが、打ち上げ花火しか入ってないやつとかチョイスしそうだ。何がいいとかは分からないが、とにかく一番はこいつを見張ることだと思った。
俺と山下は早めにスーパーに行き、花火とライター、小さめのバケツを調達する。案の定、どでかいバケツに花火が大量に入ったやつを買おうとしていたから、「今日だけで使い切れる量じゃねえだろ」と却下した。結局袋の花火のパックをいくつか買って、それを海へと直接持って行った。
その道中、山下とこんな話をした。
「山下ってさ、森山さんと付き合ってんの?」
「え、そんな風に見える? いやー照れるわー」
「付き合わないの?」
「…ミキちゃん、俺の事好きじゃねえだろ。だからもう少し気を引かせてから、告白してスタートする!」
「告白してスタートって?」
「えっと、最初っから両想いで告るのが傷付かなくていいし一番楽でしょ? でもそれだと、両想いになるまで告白しない、出来ないってことじゃん。告白してようやく相手も自分の事を意識してくれるかもしれない、そしたらそっからまたスタートよ!」
「告白してからスタート、か…」
こいつはアホなくせに、たまにこうして核心を突くような物事を言う。そしてそれが今の俺には腑に落ちる言葉だった。
きっと向日さんは俺の事を意識していない。なら、意識させてからどんどんアピールしていった方が伝わりやすいのだろうか?
告白なんてしたこともされたこともないのに、俺にそんなことが出来るだろうか。
“山下だから出来ること”そんな肩書を、自分で書き加えてしまった。
それにしたって、
「……(森山さん、山下の事好きだと思うけどな…)」
こういう野暮なことは口にするなと、どこかで聞いたことがあるから山下には言わないでおく。
俺は二人が上手く行けばいいと密かに願っていた。
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