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電車を一回乗り継ぎ、高校へ通う。いつも電車に乗ってからは音楽プレーヤーから流れる音に耳を傾ける。

人の話し声や外の音というのがどうも苦手だ。学校に着いてからも、教室に入るまではずっと聴いていた。


教室に入ると、半数くらいいつも来ている。俺の席は窓際から二列目の、後ろから二列目。まあまあいい席だ。

自分の席に着くと、どかっと目の前に一人座ってきた。友人の榊郁也さかきいくやだ。


「おはよ、正樹」

「おっす」

「なあ、そういえばさ。夏休みに山下たちと泊まりで海行こうって話あんだけど、正樹も行かない?」

「山下と、あと誰?」

「俺と山下、あと浅見と原田が今のとこメンバー」

「てか、男だけで海行くの?」

「まあいいじゃねえの、高校生の思い出作りさ。なあ、行かね?」

「うーん…」


断る理由もないし、確かに高校生といえば、夏休みに海に行くってイメージもある。今挙げられたメンバーであれば、十分楽しめそうだ。


「…分かった、行く」

「よっしゃ! んじゃあ山下たちにも報告しとくな」

「おう、頼む」


こうして俺は、夏休みのイベントが一つ増えたのだった。

修了式しかない今日はやはり午前中で終わり、帰りにお昼も兼ねて5人でファミレスに寄って行った。


日にちを相談する、かと思いきや、それはあらかじめ決まっていた。特に予定は入っていなかったから良かったものの、こういうのはみんなで相談するものなのでは…と少し疑った。

この海に行く話は山下が中心となって進めていた。


山下はクラスでリーダー的とかではないが、友人は多い方だと思う。常に誰かといる。浅見や原田も他のクラスメートよりは話す存在。郁也は中学が一緒だったこともあるが、妙に人懐っこい。だから俺が一人でいることは、こいつによってなかった。


海に行くのであれば、海パンが必要になる。…新しいのを買ってみようか。

俺は少し浮かれていた。





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