危険デュエル!恐怖のタスポワール号(中編)

前回のあらすじ:

中毒性が高いと社会的に問題視されているソーシャルゲーム【ブレイブスロード】にハマっているタケル。


ガチャの引き過ぎでクレジットカードは限度額を超え、困っていた所にそのゲームを開発した企業の会長を名乗る怪しい老人に声をかけられる。


勝てばカードの借金はチャラ。そのうえ賞金も入るとそそのかされ、タケルは船上で行われるデュエルへの参加を決意。


霧に包まれた暗い海の中に浮かぶ豪華客船タスポワール号


危険な臭いがプンプンするデュエルの幕が静かに開けようとしていた。。。


―横浜某所―


「私はこのコンペティションのホストを務める荒川だ」


タスポワール号艦内にひとりの男の声が響き渡る。


メインホールである会場には100名ほどの参加者が集まっていた。


吹き抜けになったホールをぐるりと取り囲む2階席にはデュエルを観戦する招待客と思われる金持ちそうな連中がディナーを取りながら参加者を見下すかのように優然とテーブルに座っている。


「これよりルールの説明を行う」


【限定デュエル】

プレイ時間は1時間。


40枚のディスクを選定し、任意で探した対戦相手と会場内に設置されたデュエルブースで1対1、5分づつDJを行う。


勝敗はデュエル審判システム、ジャッジメントが行う。


1度使用したディスクは返却ボックスに入れ、同じディスクを再び使用することはできない。


【勝利条件】

参加者には開始時に8つの★のバッジが与えられそれらを全て左胸に着ける。


勝利条件は下記の2つ

1.手札のディスク全てをデュエルによって消費すること

2.★を8つ以上保持すること


「ルールの説明は以上。 これよりディスクのレンタルを開始する」


「レンタルの制限時間は20分だ。まずは誓約書にサインしてもらい、それが済んだ者からディスクをレンタルしてもらおう」


「ククク、あまり時間はないぞ」


荒川が弱者を手玉にとったようないやらしい笑みを浮かべた。


参加者全員は我先にと雪崩のように一斉にレンタルブースへ走る。


ブースで黒服から渡された誓約書にはA4サイズの用紙1ページに肉眼では解読不可能なほどなにやら細かい文字がびっしり書き込まれている。


「なんだこの細かい字は?それに難しい言葉ばかりで全然意味わかんねーぞ」


時間に猶予がないこともありタケルは読むことを早々に諦め、誓約書にサインと拇印を押し黒服に提出。


ディスクが並んでいる棚に向かい、規定である40枚のディスクをディスキングする。


「85万円だと!?なんだこのレンタル料は!ぼったくりにも程があるぞ!!」


先に精算に向かった男の大声が会場に鳴り響く。


「勝てば問題ない」


スピーチ台に立つ荒川の低い声がマイクを通じて響く。


「誓約書に書いてあるが、勝者はディスクのレンタル費用およびブレイブスロードで滞納している借金は全てチャラになる」


「負けたらどうなるんだ!」

「そーだ!そーだ!」


参加者からヤジが飛ぶ。


「全てはその誓約書に書いてある。それを読むといいだろう。まあそんなものを読んでいる内に20分などあっという間に過ぎてしまうがな」


会場はザワつき、複雑な感情が交錯した不穏な空気が立ち込める。


タケルは勝つことのみに集中し、負けた時の不安や周りの騒音をかき消しディスキングに集中する。


「よし!ディスクはこれで完璧だぜ」


次号、ついに危険なデュエルが始まる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る