SDO+(サウンド・デュエル・オンライン Plus)後編

SDO+の反応を受け住宅街の路地を曲がると薄暗い突き当たり。

そこにはタチの悪そうな数名の不良がたむろしていた。


「あっちからカモが飛び込んで来てくれたぜ」


「 わざわざ俺らの居場所を知らせてくれるとは便利なモンだなぁSDO+ってのはよぉ」


「おい、怪我したくなきゃ今すぐお前らのヘッドギアとターンテーブルを置いてけ」


(あの詰襟の紋章は・・・・聖乱高校の連中か)


メガネは自分達がおかれている状況を把握した。


聖乱高校。それは蓮葉町周辺にある高校の中で不良の巣窟として悪評名高い高校である。


「おい、デュエルしろよ」


そこへタケルが果敢にもその不良集団の頭らしき男にデュエルの挑戦を挑んだ。


「・・・・・・・・。」


不良集団の頭らしき男は腕組みをしたまま黙っている。


「このダボがぁ、俺らが天下の乱高って分かって喧嘩売ってンのか!」


「そのヘッドギアは見せかけか?あんたもデュエラーなんだったらそんなチンピラみたいなセコイ手を使わず正々堂々勝負しろよ」


タケルは臆せず黙っている男をさらに挑発する。


「何だとこのガキィ!ウチら暴斗夢頭(ぼとむず)の頭である武富士さんに向かってなめてんのかテメェ」


「ブチ殺すぞゴルァ!」


取り巻きから殺伐としたヤジが飛ぶ。


「・・・・殺ってやるぜ!デュエルは喧嘩だぁ。ベコベコにしてやんよ!」


武富士と名乗る暴走族の頭らしいその男はタケルの挑戦を受けて立った。


「・・・・俺が勝ったらこの場はおとなしく見過ごしてもらう。いいな!」


「この俺に勝てたらな。負けたらヘッドギアとタンテは置いてってもらうぜ」


「勝負は1ラウンドの一本勝負だ。いいな」


「ああ、いいぜ」


タケルはルールを承諾する。


デュエルは1ラウンド10分。

ラウンドの数は1ラウンドから3ラウンドまで選べる。

いずれも加算式のポイント制で総合ポイントの多い方の勝ちとなる。


デュエルファイト!


「俺様の 烈苦威餌夢(レクイエム) 聴かせてやんよ」


武富士はスクラッチと呼ばれるDJテクニックを駆使したプレイを炸裂。高度な技術としてポイントの加算対象となるが失敗すれば減点対象になる諸刃の剣。


しかし武富士のそれはこすりを入れるタイミング、技術共にかなりハイレベルなものだった。


「スクラッチ?!なんでアイツあんなに上手いんだ!」


「どーョ、単車のコールで鍛え上げたこの俺様のスクラッチ。音の抜き差しのテクに関しちゃ誰にも負けねぇぜ!」


「ホラ、お前の番だぜ」


続いてタケルのターン。


タケルのスタイルは実際の観客の前で相手やオーディエンスをMCで煽り盛り上げるタイプのデュエラー。


状況に応じ場を盛り上げる選曲のセンスに定評はあるがミックステクニック自体はさほどでもない。


ポイントは武富士には及ばなかった。


結果、敗退。


「・・・・・・・・・・・・。」


気まずそうな顔で3人は目を合わせる。


「ハッハッ ハッ !だせーコイツ。てんで弱いじゃねーか!」

「オラ、おとなしくお前らのヘッドギアとタンテ渡せや」


「グッ・・・・!」


タケルは窮地に立たされた。


その様子を見ていたメガネは静かにかばんのチャックを開け、中から黒く光る何かを取り出した。


「・・・・ゲッ!銃じゃねーか」

「おい、銃だぜ!」


想定外の展開に場は一気に緊張に満ちた空気に包まれる。


「・・・・へっへへへ。そんなモン出してどうするつもりだよ。まさかそれで俺らを撃つ気じゃねーよな?」


不良集団のひとりが冷や汗をかきながらメガネにその銃でどうするつもりかを問う。


「安心しろ。光線銃だ」


「こ、光線銃ダァ?バカかこいつ!ビビって損したぜ。そんなモンでどうやって俺らを殺るつもりだこのガキャー」


「殺っちまえ!!」


一斉に不良集団が3人に殴りかかってくる。


「こうするのさ」


そう告げるとメガネは少佐に銃を投げて渡した。


その瞬間、普段は気弱な性格の少佐が精悍な人格に豹変。


襲いかかってくる不良集団を格ゲーのやりすぎで身に染み付いた格闘技で一掃する。


「てめーら!覚えてろ」


少佐にコテンパンにやられた不良集団はバイクにまたがりその場から去ってゆく。


「危なかったー。助かったぜ少佐!サンキューなメガネ!」


急場を逃れホッとしたタケルはふたりに礼を言った。


「万が一の時のために忍ばせておいたのが役に立ったな」


メガネは光線銃を少佐から受け取りかばんにしまう。


「銃持ってるだけであんなに強くなれんならいつも持ってればいーのに」


タケルが少佐に提案する。


「ずっと銃を持っていると気が貼りっぱなしになって疲れちゃうんだよ」


少佐はいつもの性格に戻っていた。


「しかし、アイツただの不良かと思ったけどかなりの強敵だったぜ!」


「いつでもデュエルが出来るようになった今、これからは何処でどんなタイプの敵に遭遇するか分からん。もっと腕を磨くんだなタケル」


「ああ!」


こうして、SDO+の発売によって数年に渡りゆるやかに流れていたタケルの日々の戦いは急展開し本格的に激化してゆくこととなる。



次号に続く

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