SDO+(サウンド・デュエル・オンライン Plus)

「ボク~。おじさんとデュエルしよっか」


平日の昼下がり。どこにでもある住宅街の中にある平凡な道端でスーツを着た 七三分けのサラリーマンが道路にチョークで落書きをして遊んでいるSDO+を実装した5歳くらいの子供ににっこりと微笑み優しく話しかける。


「うん!いいよー」


サラリーマンと子供は首にかけたヘッドギアを頭に装着。


すると ヘッドギア に付いているスクリーンにデュエルを行うためのバーチャルリアリティで映し出された機体がふたりの目の前に現れる。


デュエル・ファイト!


ディスクにかなりの課金をしていると思われるそのサラリーマンはデュエル審判システム、ジャッジメントから高評価が得られやすいといわれる新作アニメのOP、EDを連発し、たいしてディスクも持っていない幼き子供を完膚なきまでに叩きのめす。


「ガキなんてこんなモンよ。よっしゃーデュエルポイントがまた上がったぜ!」


「うわーん!ママ~あのおじさんがイジメたー」


「あなた!ウチの子に何するんですか!」


子供の号泣を聞きつけ家から飛び出てきた母親がサラリーマンに抗議する。


「デュエルとは勝負の世界。たとえ女子供であろうと容赦はしない」




「・・・・あのリーマンえぐいなー」


ヘッドギアを付け、遠巻きにデュエルを観戦していたタケルがつぶやく。


「褒められたものではないが、確実に勝利を収めポイントを上げるという意味ではあれも戦略のひとつではあるな」


メガネが世知辛い感想を述べる。


「ロクにディスクも持っていない子供に近づいてポイントを奪うなんて最低だよ!」


正義感が強く、優しい性格の少佐が先ほどのデュエルに抗議する。



説明しよう!-ーーーーーーーーーーーー-ーーーーーーーーーーーー-ーーーーー


SDO+とは


海座財閥が新たに発表したSDO( サウンド・デュエル・オンライン )にリンクする専用のハード機器。


これまでネット回戦を利用し、実機を使用して家でしか出来なかったオンラインデュエルをいつでもどこでも可能にした現実拡張システム。


頭にヘッドフォン機能とバーチャルリアリティを映し出すスクリーンが搭載されたヘッドギア、手首にターンテーブルと呼ばれるバーチャルディスクを引くための円板状のバングルを装着することにより、 SDO+を持っている者同士であればどこでもデュエルが可能になった。


SDO+を持つ者が周囲10m以内にいると手首のターンテーブルが振動し知らせてくれる【お知らせ機能】も実装。


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「ポイントを上げてSDOにデュエルランクが上位に表示されるようになれば注目されて色んなイベントからオファー来るようになるしな」


「人気者になって賞金が稼げるプロデュエラーになれるよう俺らもがんばんねーと!」


タケルがめずらしく分かりやすい状況説明をする。


「なら僕、あのリーマンとデュエルする!」


先ほどのデュエルに納得がいかない少佐が目の前にいるサラリーマンにデュエルを申し込む。


「僕とデュエルしてください!」


「・・・・デュエルランク5か」


サラリーマンがヘッドギアを介して少佐のデュエルランクをチェックする。

ちなみにサラリーマンのデュエルランクは7。


「うーん。せっかくですが止めておきます。おそらく負けないとは思いますが絶対勝てる保証はないので」


「あなた!それでもデュエラーなんですか!」


「僕は確実に勝てる相手とだけデュエルを行う主義なんですよ。下手に負けて無駄に ポイントを下げるなんてことはまっぴらゴメンですね」


「でも!」


「やめておけ」


メガネが少佐の肩に手を置き首をふる。


「それでは」


そういうとサラリーマンはその場から立ち去った。


デュエルを始める際にはお互いがそのデュエルを承諾する必要がある。

双方が承諾しなかった場合、デュエルは成立しない。


「SDOとは自身のランクを上げ、実力を世間に示すためのツール。あんな戦い方をしていてはランクは上がるかも知れんが実際のデュエル(オフ会)で勝つことは到底できないだろう」


「あの子にはかわいそうだがこれもデュエルの現実」


メガネが険しい顔で澄み渡った青空を見上げる。


「あ!近くに他のデュエラーがいるぞ」


ターンテーブルの振動を察知したタケルが声を上げ、路地を走りはじめる。


ふたりもタケルについていき路地を曲がると、目の前に現れたのは学生服を着た強面なヤンキーの集団だった。。。



続く

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