地元の味を守れ!(前編)

「駅前にデュエルスポットが出来たらしいから行ってみようぜ!」


-デュエルスポットとは-

実際にオーディエンスがいる前でデュエルを行う練習をするための場として国が提供。バスケットコートほどの広さにステージとスピーカーが設置されている。


SDOとは違い勝者を決めるのはその場にいるオーディエンス。


SDOが選曲スキル、ミックスなどDJテクニックのみでポイントを競う場に対しデュエルスポットではオフ会と同様、DJの基本スキル+MCによる煽りなど総合的なパフォーマンスが要求される。


全国で最初に設置された秋葉原駅前のデュエルスポットには多くの強豪デュエラーが集いSDOでそれなりのランクにいる実力者しかプレイできない暗黙のルールがある。


デュエルの観戦を楽しむオーディエンスも大勢集まり毎週末ちょっとした無料フェス状態と化している。



「結構人いるなー」


タケルらの地元である蓮葉町は大きな町ではないがそれでも平日にも関わらず20名程度の人が集まっている。


今デュエルを行っているのは老人とガタイのいい脂ぎった顔をした40代くらいのスーツを着た男だった。


「ワシのターン。え~い」



「あれ?ラーメン屋のジイさんじゃんか」


デュエルを行っていたのはタケルが幼い頃から馴染みのラーメン屋の店主だった。


「味っ子かぁ~流石料理人。渋いのかけんな」


タケルはその老人店主に声援を送るが、店主は緊迫した表情で相手を凝視しタケルの声援は届いていない様子だった。


「どうしたんだろう?おじいさん、なんかいつもと雰囲気違うね」


人一倍センシティブな少佐が店主の異変を察する。


「デュエルは常に真剣勝負。とはいえあの老人、楽しんでデュエルを行っているようには見えんな」


メガネも少佐の意見に同意する。



「俺のターン!このデュエルであんたが負けたら店を手放す約束、必ず守ってもらうからな」


「店は絶対に渡さん。ワシは勝つ!」



「店を手放すって・・・・一体どういう事だよジイさん!」


「タ、タケルくん」


ようやく店主がタケルの存在に気づく。





事の顛末(てんまつ)を店主から聞くと対戦相手は悪質な地上げ屋。そしてこの男から度々店や客に嫌がらせをされ客数は激減。


このデュエルは店の存続を賭けたアンティルールの決戦だという。


「俺はプロの地上げデュエラー。今までデュエルで多くの土地を奪ってきた」


「老いぼれジジイに負けるほど俺は甘くないぜ」


地上げデュエラーを名乗る脂ぎった顔のその男はバブル期に流行ったアニメで抗戦。王道もののビッグタイトルを矢継ぎ早に連発し店主に畳み掛ける。



「うわぁぁああ!」


店主は地上げデュエラーの勢いに吹き飛ばされ倒れる。


「ジイさん大丈夫か!」


タケルらは店主の元に駆け寄る。


「・・・・ワシはもうダメだ。あの男の勢いにこの老体では対抗できん。悪いがタケルくん。ワシの代わりにあいつとデュエルしてくれんか?」


店主は震える手を伸ばしタケルの手を力なく握る。


「分かったぜジイさん。俺が代わりにジイさんの店を守る!」


「おい!悪徳地上げ屋。選手交代だ!いいな」


「俺はプロだ。誰であろうと相手するぜ」


「娘娘は俺ら蓮葉町に住む人間にとっておふくろの味。お前なんかに潰させてたまるか!」


こうして地元の味を守るため代理デュエルの火蓋は切って落とされた。



続く

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