新学期

「・・・・今年も夏が終わっちまったなぁ」


ズボンの両ポッケに手を突っ込み、切なそうな顔をしたタケルがつぶやいた。


「全然モテなかったね。(毎年だけど)」


少佐も成果がなかった夏にため息をもらし積年の思いをめぐらす。


新学期が始まり、屋上からタケルと少佐は下校している生徒の群れをボーっと眺めていた。


メガネは黄昏ているふたりに構うことなくPS Vitaで新作の美少女ゲームに勤しんでいる。


「メガネ君はいいよね。一部女子からなにげにモテるし」


「ほんと、余裕って感じだよな」


ふたりから嫉妬(ジェラシー)がらみのねっとりした目線に気づいたメガネが顔を上げる。


「私は2次元の女子にしか興味はない」


メガネは視線をPS Vitaに戻し、ゲームを続ける。


「これだよ」


「俺なんかRe:ゼロの真似して告白もしたのに完全玉砕だったぜ」


「期待した初の海回も男ばかりの異世界だったしね」


ふたりは息をそろえ、改めてため息を漏らす。


周りには秋の知らせを告げるツクツクホーシの鳴き声がこだましている。


「こんなに生徒がいるってのに、何でたったひとりも俺に振り向いてくれないんだ畜生!」


「神さまのバカヤロー!」


夕暮れの秋の空に向かってタケルは思いの丈を叫んだ。


その時だった。


天空から眩い一筋の光が舞い降りその光は学校にグングン近づいてきて眩さを増す。


「うぎゃー!眩しい!!目がつぶれる~」


学校めがけ強烈な光がシュバンと地面に叩きつけられ残光が辺り一面に飛び散る。


そして何事もなかったかのように周囲は元の夕焼けに戻った。


「・・・・一体、なんだったんだ今の光は?」


ニュース速報:

今日の夕方、蓮葉町一帯を謎の閃光が覆う事件が発生しました。

原因は不明。現在、町は静寂を取り戻しいつもと変わらぬ状態になっています。





―翌日―


先生:「えー、それでは転入生を紹介します」


ガラガラと引き戸が開き転入生が教室に入ってきた。



つづく

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