翔んだ転入生

「自己紹介をどうぞ」


クラスの担任が転入生に自己紹介をうながす。


「 はじめまして。 æ–‡å—化ã ' です。 サウンドデュエラーになりたくて神の世界から来ました」


超高校級の電波な自己紹介にクラスがどよめいた。


名前は神の世界の発音で日本語にアレンジすると”神羅(しんら)”だという。中性的な顔立ちで見た目は10歳くらい。金髪で外ハネしたセミロングの髪型。白いローブのようなものを着ており外見や声からは男なのか女なのか判別がむずかしい。


「また変なヤツが入ってきたな」


タケルは頬杖をつきダルそうな表情でつぶやいた。


「昨日タケルくんが神さまを冒とくするような事言ったから怒って来たんじゃない?」


少佐が神の世界から来たと言う得体の知れない存在に怯える。


「神の降臨など信じがたいが昨日の光とは何か関係があるかも知れんな」


メガネが昨日からの展開を紐付けて推理する。


「ではあなたの席は・・・・」


担任がそう言いかけると新羅はツカツカと歩きだしタケルの前で止まった。


「お主、タケルさんですよね」


「ああ、そうだけど」


「わ、我とデュエルしてください!いつも神TVでタケルさんのデュエル観ています。タケルさんとデュエルがしたくて我はこの地に舞い降りたのです」


「ちょっと待ったー!」


タケルの斜め後ろの席からコールが鳴り響く。


「やい!転入生。タケルと先にデュエルするのはこのボクなんだからな!横入りなんて許さないゾ!」


タケルに2連敗した雪辱を晴らすため蓮葉学園に転入してきたデュエルプリンス時政がタケルと神羅の間に割ってきた。


「タケル、モテんじゃん」


モブっぽい数名の女生徒がタケルをからかう。


「俺は女子からモテたいんだっつーの。変なガキ共に絡まれて迷惑だぜ」


タケルは頬杖をついたままプイっとそっぽを向いた。しかしその直後何かを思いついたようにハッとした表情になり神羅の方に向き直る。


「お前、神さまなのか?」


「えっへん! はいなのです。 この地球を作ったのは我なのですよ」


「神さまって事は人間の願いが叶えられるんだよな?」


タケルは自分をモテモテハーレムにする希望を叶えてくれたらデュエルするという交換条件を神羅に提案した。


「そういう事はできないのです」


「そんなケチな事言わないでさ!チロっと。チロっとでいいから頼むよ神さま」


タケルは千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスを逃すまいと両手を合わせ拝む格好で神羅にへりくだる。


「無理なものは無理なのです。神が出来ることは地球に水と酸素を与えることだけで後は見守る事しかできないのです」


神羅が言うには、地球というのは神の子供が将来神となって宇宙を統率するための練習として与えられる学研で言う”みじんこ飼育キット”のようなものらしい。


従って宇宙も地球も神の数だけ存在しその数は無限らしい。


「なんだ。拝んで損したぜ!お前、アダ名はこれから”ちゃま”な」


「な、なんですかその呼び名は?」


「だってお前、神さまってもなんも出来ないしまだお子ちゃまだろ?だから”ちゃま”」


「無礼な!確かに我はまだ神の世界では子供ですが10億年以上生きているのですよ。お主よりはよっぽど年上なのです」


神羅はほっぺたをプクーっと膨らませる。


「ところで昨日の閃光と神羅は何か関係があるのか?」


閃光の正体を突き止めるべくメガネが神羅に質問を投げかけた。


「はいなのです!我はあの方舟に乗ってきたのですよ」


神羅は自分が神の世界から地球に舞い降りるために乗ってきたという方舟の方向を指差す。


そこは学校のゴミ捨て場だった。


そこへ丁度ゴミ回収車がゴミの回収に来た。


「ったく、こんなバカでかいゴミ捨てやがって。かったりーなぁ」


ゴミ回収業のおじさんが重そうにエイやと方舟をゴミ回収車の後ろにポイと投げ入れた。


回収車により方舟は粉砕され、車は静かに走り去った。


「・・・・・・・・行っちゃったね」


少佐が気まずそうな顔で回収車を見送る。


「・・・・え、えーーーーー!!!!」


状況を把握した神の子は驚愕した。


こうして神の世界に戻ることができなくなった神の子供、神羅は自身で作った地球に生息することになった。



終わり

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