真のヒーローはどっちだ!

「さいたまの平和を守るのはこの俺だ!」

「いや、さいたまの平和を守るのは私だ!」


ここは駅前のデパートの屋上。


見慣れぬ戦隊っぽい格好をしたふたりの男がなにやらモメている。


「俺がサイタマンだ!」

「いや、私がサイタマンだ!」


ぐぬぬぬぬ。。。。


両者は自分が真のサイタマン(謎)であるとお互い一歩も譲らない。


「良い子のみんな!真のサイタマンはこの私だ!ニセモノにだまされるな!」

「いーや良い子のみんな!俺が本物のサイタマンでニセモノはあっちだ!」


ヒーローショーを観るために訪れた親子はふたりの言い争いに困惑している。



「デュエル(決闘)だ!」


こうしてサイタマンという自称ヒーローの名を賭けたふたりのデュエルが始まった。


ジャッジメントはその場にいるオーディエンス。


じゃんけんでサイタマン(俺)が先攻に決まった。


「行くぜ!俺のターン」


サイタマン(俺)は何度も再放送が繰り返されている年代の幅を超える超鉄板タイトルを連発。


「どーだ!俺の正義の力に屈したか!」


続いて後攻サイタマン(私)のターン。


「誰でも知っている鉄板曲だけでゴリ押しする戦法か。じゃんけんに救われたようだな!」


「真の正義は私にある!行くぞ私のターン!」


サイタマン(私)はコアファンから支持が熱い名曲を披露。


「いいぞー!」

「もっとやれー」


思わぬ展開となったヒーローショーを観に来た親子連れはふたりの特撮・戦隊デュエルを楽しんでいる。


デュエルで同じ曲をプレイすることは禁忌であり2回お手つきを行うと即負けとなる。


何度戦っても判定は割れ、決着がつかず戦いはどちらがよりマニアックなタイトルを知っているかに発展した。


ふたり共重度の特撮・戦隊マニアでお互い一歩も譲らず戦いは白熱。


「ハァ、ハァ・・・・」


「あのーそろそろ閉館なんですけど」


警備員がふたりに閉館時刻である旨(早く帰ってくれ)を伝え、結局このデュエルは決着がつかず終焉を迎えた。


そしてデュエルを通じ、互角だったふたりは互いを認め合いサイタマンとして一緒にさいたまの平和を守ることを決めた。


「俺がレッドだ!」

「いや、私がレッドだ!」


今度は色問題でモメはじめた。



「・・・・今回、全く出番なかったな」


ヒーローショーを観に来ていたタケルがつぶやいた。


「まあでも面白いデュエルが観れたし良かったんじゃない?」


このショーにタケルとメガネを誘った特撮・戦隊マニアでもある少佐が感想を言った。


「あのふたりにさいたまの治安を任せるのは不安があるがな」


客観的に遠目から観ていたメガネは的確な意見を述べた。



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