決闘(デュエル)後編

タケルVS時政。プライドと欲望を賭けた熱きデュエルは終盤に差し掛かっていた。


「行くぞ!ボクの必殺コンボ、プラチナム・エクスペンシブ!!」


金にモノを言わせレアディスクをふんだんに織り交ぜた時政の超豪華なプレイが炸裂。


オーディエンスから割れんばかりの歓声が沸き起こり、デュエル審判システム【ジャッジメント】が時政のスコアを叩きだす。


ポイントの差は大きく開き圧倒的に時政の優勢。


「ヤバいよ!メガネくん、このままだとタケルくんが負けちゃうよ」


オーディエンスとして会場からタケルを見守る少佐が困惑しメガネに戦況を問う。


「あのポイント差を次のラウンドだけで埋めるのは至難の技。タケル、どう出るつもりだ。。。」


メガネも固唾(かたず)を呑んで場面を見守るしかなかった。


「どーだ!参ったかタケル。このポイント差を追い越すのは絶対無理なんだからな!」


崖っぷちと誰もが疑わない状況でタケルから思いもよらない言葉(スペル)が出る。


「フフフ、今お前は致命的なミスを冒した。もはやオレに勝つことは不可能だ」


タケルは怪しげな含み笑いを時政に投げかける。


「な、何だと?ボクが何のミスをしたってゆうんだ。ポイントの差は歴然だし、オーディエンスだってみんな盛り上がってるじゃないか!」


「これからジワジワ出てくるのさ、お前が冒したミスがな。だがそれに気づいた時にはもう遅い!」


タケルは絶対の勝利を確信したような強い眼差しで、時政を指差す。


「…い、一体ボクは何のミスを冒したんだ?」


タケルの放った謎の一言で時政は動揺。プレイにムラが出始め調子が崩れはじめる。そこをタケルがついて巻き返した。


「メッキが剥がれ始めたようだな。行くぜオレのターン!」


うおぉぉーーーーー!!



MC『それでは判定です!』


ジャッジメントが最終審判を下す。



MC『WINNER タケル!!』


場内から歓声が沸き起こる。


「約束だ。琴原さゆみの生写真を渡してもらおうか」


ぐっ…


時政は奥歯にモノか挟まったような苦い表情でタケルに生写真を渡す。


「タケル!教えてくれ。あの時一体ボクは何のミスを冒したんだ?」


「・・・・ひとつだけヒントをやるよ」


「お前は”自分の弱い心に負けた”んだ」



ーエピローグー


木六本ヒルズの最上階にある時政のオフィス。


時政は今夜のデュエルを録画した動画を入念に確認していた。


(ルール上では何の問題もない。そもそも違反をしたならジャッジメントが警告を出すはずだ。…では一体なぜボクはあの圧倒的な優勢から負けたんだ?)


時政はタケルが最後に言っていた言葉を思いだしハッとする。


「ま…まさか、あれはただボクを動揺させる為に言った何の根拠もないハッタリ?……ブラフだったのか!?」


「あのままボクは普通にデュエルしていたら勝てた・・・」


時政の肩がワナワナと震える。


「デュエルキングダムでは決勝前に親切なフリをしてボクに近づき下剤入りのジュースを飲ませて棄権させ優勝を手にし、今回はブラフで勝利だって?」


時政は優勢だったにも関わらずタケルのブラフにまんまとひっかかり負けた自分の不甲斐なさと悔しさから目に涙を溜めながら叫んだ。


「タケル・・・・お前だけは絶対に許さないんだからな!」



つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る