危険デュエル!恐怖のタスポワール号(前編)

キーンコーンカーンコーン


学園終了のチャイムが鳴る。


「おい!タケル。お前いつになったらボクと勝負するんだ!」


デュエルキングダムでの雪辱を晴らすためタケルとのデュエルを渇望している時政がクラスメイトでもあるタケルに熱く問いかける。


「あー、今忙しいからまた今度なー」


タケルはスマホから目を離さず席を立つ。


「ちぇっ、何だよアイツ・・・・」


時政はスネた子供のようにヘンと口びるを尖らせている。


「タケルくん、店長のトコ行こうよ!」


教室を出ようとしているタケルに少佐が声をかける。


「んー、ゴメン。ちょっと今日は忙しからまたにするわ」


「・・・・タケルくん」


スマホから目を離さないまま少佐とメガネの横を通り過ぎるタケルの後ろ姿を少佐は心配そうな表情で見送る。


「どーしたんだろうタケルくん?」


「なにやらソシャゲにハマっているらしい。あまり度を過ぎなければいいが」


メガネも心配そうな表情でタケルを見送る。


タケルのハマっているソシャゲ【ブレイブス・ロード】


開発元はパチンコなどエンターテイメント業を営む大手企業。そのノウハウを活かし快楽神経を刺激するドーパミンがドバドバ出る施策をゲーム内の随所にちりばめ課金中毒性が高いゲームと最近、社会的に問題視されているタイトルである。


このゲームをやりだしてからタケルはデュエルにもあまり興味を示さなくなり、ひたすらゲームに没頭し課金していた。


タケルは帰り道にある公園のベンチに座り高難易度クエストに熱中している。


「あー、クソ!負けた。このクエ攻略するにはあのユニがないとやっぱキツイな」


そしてタケルはガチャを回そうとした。


しかしタケルのクレジットカードはすでに限度額を超えていて、これ以上の課金は無理だった。


「ちっくしょう!金さえあれば!!」


その時であった。


「フォッフォッフォッ。もっとガチャ引きたいかの?」


ゲーム画面に集中しているタケルの背後にいつの間にかサングラスに黒服のボディガードらしき男数人を引き連れた見知らぬ老人が立っていた。


「うわッ!何だアンタ。いきなり声かけてくるなよな」


背後から突然声をかけられ驚くタケル。


「君、タケルくんじゃろ?」


その老人は問いかけた。


「な、なんでアンタ俺のこと知ってんだよ。アンタ誰だ?」


「クックッ、ワシはこういう者じゃ。おい!」


老人を取り巻く黒服の1人がタケルに名刺を渡す。


「GONDO?え?GONDOってまさかこのゲーム作ってる会社の?」


「いかにも。そのゲームを作ってるのはワシの子会社でワシはそのグループを総括する会長じゃ」


「な、なんでそんな会長が俺なんかのことを・・・・」


「ワシはこう見えてもデュエルが好きでの。前年のデュエルキングダムで優勝したタケルくんのことはもちろん知っておる」


「で一体俺に何の用だ?」


「クックックックッ、君お金に困っとるんだろ?もし良かったらワシが救済してやろうと思っての」


「救済?」


「あれを出せ」


黒服が一枚の招待状をタケルに渡す。


「今週の土曜日、ワシが主催するデュエルコンペティションがある。良かったらソレに出てみんか?」


「勝てば限度額を超えたカードの借金はチャラ。そのうえ賞金も入る。いいユニットを引いて今詰まっているクエストもクリアできるかも知れんぞ」


「組織を預かる身としても破綻者を見過ごす訳にはいかんしな」


GONDOの母体会社の会長を名乗るその老人は危険な笑いを浮かべながらタケルをデュエルに勧誘する。


「・・・・もし、負けたらどうなるんだ?」


危険な笑みにゴクリと唾を飲み、タケルはその老人に問いかける。


「負ける?優勝者である身でありながらそんな弱気な事を考えておるのか?いかんのぅ、実に遺憾じゃ」


老人はその問いには答えずタケルを挑発する。


「まだ数日ある。どうするかは自分で決めればよい。だが今のままではガチャを引くことはおろか膨れ上がった借金を返すこともできまい。悪い話ではないと思うぞ」


そう言い残しその老人は公園の前に停めてある見たことのない黒塗りの高級そうなリムジンに乗ってタケルの前から姿を消した。


ひとり公園に残されたタケルは招待状の封を開け中を確認した。


「・・・・畜生。危険な臭いがプンプンだがやるしかねーぜ!デュエルなら絶対誰にも負けない!!」



つづく



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