転入生3 刹那素彦
「それでは転入生を紹介します」
「刹那素彦(せつな・もとひこ)です。よろしくお願いします」
「また転入生かよ。この前もへんな自称神さまが転入してきたばっかだっつーのに」
タケルが男子の転入生には何の興味もないといった表情でボソリとつぶやく。
「我は自称じゃないのです!本当に神なのですよ」
タケルのつぶやきを聞き逃さなかった神羅(あだ名=ちゃま)がタケルに抗議する。
「わーった。わーった。でももう次の転入生が出てきたってことはお前は1話かぎりの捨てキャラだったってことだろ」
「・・・・え?そ、そうなんですか」
神羅の顔が不安で青ざめる。
「確かに。12月に転入なんて珍しいもんね」
少佐がタケルの意見に同調した。
「いくら話が面白くないと先に進めないとは言え、世知辛い世界だな」
メガネも神羅が戦力外通告をされた様な意見を述べる。
「ちょ!ちょっと待ってくださいよ。じゃあ一体、我はこれからどうなるのですか?」
「そんなことよりボクとのデュエルはどうなってるんだ!」
時政が話に割って入る。
「あーそこ、ちょっと静かにしてください」
担任がタケルらを注意した。
―昼休み
刹那は自分の席となった窓際の後ろの席で静かに校庭を眺めていた。
その表情はどこか切なく憂いを含んだ表情をしているように見える。
「静かな奴だな」
購買部で買ってきたやきそばパンをかじりながらタケルは転入生の感想を述べる。
確かにこれまでの転入生、時政、神羅とはちがい刹那素彦はいたってノーマル、むしろ静かすぎて空気のような存在だった。
ミーハーな女子に囲まれてもあまり喋らないため会話は弾まず気まずくなった女子は去り今は独りでポツンとしている。
「あんな静かでフツーそうな奴で大丈夫かよ?」
「内気で人見知りするタイプなんじゃない?」
クリームパンをほおばり少佐がつづく。
メガネは無言でパックの牛乳を飲んでいる。
「・・・・まあ何だ。転入早々とはいえボッチってのは寂しいからな」
タケルは残ったパンを丸ごと口に押し込み刹那の席へ歩み寄った。
「俺はタケル。よろしくな!ところでお前デュエルやるのかよ」
声をかけられた刹那はぼんやり校庭を見つめていた視線をタケルの方に向けた。
「・・・・デュエル?うん、好きだけどボク全然強くないよ」
少佐とメガネも輪に加わり互いの自己紹介をかねて井戸端会議に花を咲かせはじめる。
「タケルくんの事はネットで知ってるよ。デュエル・キングダムで優勝したんだってね。すごいなぁ。ボクなんか一生かかったて無理だよ」
「へへん、まあな。よかったら今度デュエル教えてやるよ!」
「ちがう!そいつはズルしてボクに勝っただけだ!!真のデュエリストはこのボクなんだからな!」
タケルが刹那の賞賛に鼻を伸ばしていると窓の外からバタバタと轟音を鳴り響かせ、いつものようにどこかの高級レストランで昼食を済ませてきた時政が自家用ヘリで窓から教室に戻って来た。
普段と変わらないドタバタとした時が流れる。
そんなタケルらの輪の中で刹那は口数こそ少ないが柔らかい雰囲気で笑う優しそうで好印象な少年だった。
その頃、神羅は昼食をもらうため学食でバイトしていた。
◆
―放課後
「おい転入生。ちっと面かせや」
刹那は学内でタチが悪いと悪評高い不良グループにからまれた。
「お前、さっき教室で千奈美に話しかけられてただろ?」
不良グループのリーダーらしき男が刹那に睨みをきかせる。
「アイツは俺が狙ってんだ。ちょっと顔がいいのかなんか知らねーけど調子に乗りやがって。教育してやっから屋上まで来いや!」
◆
◆
◆
―翌日
「昨日、となりのクラスの不良グループがまとめてやられたらしいぜ」
「マジ?誰に!」
クラスの男子が昨日起こった事件について話をしている。
「噂だけど昨日ウチのクラスに転入してきたアイツらしいよ」
「からまれて屋上に連れてかれる所を佐藤(モブ)が見てたんだって」
「マジかよ!アイツ大人しそうなのにな。怖ぇ~」
次回:
もの静かで優しい印象の転入生、刹那素彦。
そんな刹那が関係すると噂される傷害事件が起きた。
事件の真相とは?そして彼は一体何者なのか!?
次号へつづく
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