時代の変革
前回のあらすじ
回が進むごとにPV数が減っている事実に懸念を示したメガネ。
現状できることとしてインパクトの強いタイトルを付け読んでもらう作戦を決行し1週間が経過した。
果たしてその結果は・・・・
1週間後―
「・・・・まったく効果なかったね」
少佐が落胆の色を隠せずにいる。
「まあ、そう人生甘くないというところか」
メガネも眉間にシワを寄せている。
「ま、PV数なんか気にしてたってしょうがないぜ!」
タケルが前向きな意見を発言した。
―放課後
「久しぶりに店長のトコ行ってみようぜ」
店長。かつてはプロデュエラーとして一線で活躍し現在は中古CDショップ屋を営み、タケルらのデュエルの指南役として毎回登場するはずだった役割。
しかしタケルのデュエルをする機会が極端に少ないため出番がなくこれまでに登場したのはわずか2回。
チリンチリン
中古CDショップGO!の扉を開けると入店の合図を告げる鈴の音がいつものように鳴った。
「こんちわーって!何だこりゃ?」
ドアを開けるとCDラックに収まりきらないディスクの山が通路の天井にまで渦高く積み上げられ、奥にいる店長の姿がまったく見えない。
タケルらはディスクの山を崩さないよう険しい崖っぷちの道を渡るように慎重に店長のいるレジへと進む。
「いやー商品が売れなくて売れなくて・・・・」
そこにはどんよりとした表情の店長が座っていた。
事の顛末を聞くと、デュエル界を牛耳る海座グループが突如発表したSDO+の登場によりデュエルはフルVR(バーチャル・リアリティ)化されディスクも原版のCDからmp3へと移行。
以来ディスクがパタリと売れなくなってしまったと言う。
「時代の波だよね。仕方ないよ」
店長が寂しそうな表情でつぶやく。
「突然の発表でしたしね」
少佐が店長の気持ちを察し境遇を哀れむ。
「今までは原版のディスクを持っていなければデュエルができなかった。しかしVRの採用によりそのシステムが根幹から覆されたわけだからな」
メガネが状況説明を加える。
サウンドデュエルとは元々
・CDの購入を通じてその曲を歌っているアーティストやレーベルを応援する
・おたくの持つコレクター精神を遵守する
この2つの考えを基に始まったものだった。
従って原版以外のコピーCDやmp3の使用は不可。
しかしある日突然、海座グループがこの流れを大きく変えた。
「CDだと一枚1200円くらいするけどmp3なら200円くらいでお手軽だしな」
「ディスクを持ち運ぶ必要もなくなったし便利っちゃ便利だよな」
タケルがいち消費者としての感想を述べる。
「mp3だと配信ストアで在庫の心配もなく気軽に買えるしね」
「まあ推しアイドルのCDは今でも買うけどね(違う目的で)」
少佐もつづく。
「新品だと値段がかさむ原版をデュエラーに中古で安く提供するのがウチのモットーだったんだけどね」
時代のうねりに直面する店長がタバコに火を付けフーっと煙を吐きながら答える。
「これからどうするんですか店長?」
メガネが今後の店長の展望を聞く。
「・・・・うん。これからは著作権の問題などで今後もmp3化されることのないレアディスク専門店としてやっていこうと思うよ」
「それならば今後も需要はあるし値崩れすることもないからね。自分で購入したCDをmp3化してデュエルに使用することは海座グループも自己責任として暗黙の許可を出してるし」
「とりあえず今はその資金を確保するために売れなくなった在庫の山をネットでセールに出してるよ 」
バーチャル化してゆく現代。
デュエル界にも急速に大きな変革の波が訪れていた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます