「両手」を含む小説

【冒頭抜粋】 身体の中心で脈打つ鼓動の音しか聞こえない。 胸の中に住む小さな自分が大慌てで打楽器を打ち鳴らし始めたようだ。 （トゥンク…） そう、僕は今ときめいている。 僕…

「ふ～～ん。いい子だねえ。清次郎さんだっけ。 あたしはね、この子が気にいったよ」 お芳のはきはきとした、物言いは一人娘で育ち、云いたい放題が許された境遇のせいかもしれない。 「な…

「おお、生きてるぞ～」 顔を寄せた刑事が叫んだ。 その横で可不可が長い鼻を突き出していた。 ふたりの警察官に抱きかかえられて、棺桶からよろよろと立ち上がった。 掘り返された墓穴の…

遠くから山道を登ってくる車に向けて、両手を大きく振る。「すみませ〜ん、すみません！」。男が小さく跳躍のような動きをすると、車は目の前に勢いよく止まった。アスファルトの摩擦音が響き…

チート級の異能に、魔法に、ドラゴン、そして美少女。 ユーリが転生した異世界「ハコニワ」は、ゲームや小説で散々目にした『異世界転生モノ』の世界。 何かと世話を焼いてくれる美少女リル…

ごく最近、施工が行われたのだろうか。アスファルトで丁寧に舗装された道路は、黒々と日光を照り返していた。虚ろな目で姿勢を落とし、耳を地面に擦り付ける。その地下深くから響く音を捉える…

　始まりの町――イヨークはそれなりに栄えていた。町の大きさはこの世界の上から数えて1、2、3、4……、きっと両手には収まり切る順位だろう。それだけ大きくても名産品は特になし、名物…

ツクール×カクヨム　ゲーム原案小説オーディション2022　大賞受賞作 アメノウズメノミコトの力を受けついたお嬢様。 彼女は、代償として露出せずにはいられない呪いを受けていた。 …

　志花は小説を書いている。あるいは、小説みたいなものを。 　それは、高校時代からの話だ。僕が文芸部ではじめて出会ったときから、それは今でも続いている。彼女が意味を見いだせるのは、…

　とある大陸、とある王国の北方に位置するフロイル地方。ここはかつて、世界有数の魔石採掘地だったが、今は枯渇し、終わらぬ冬と、存在しないはずの白い竜によって支配された不毛の地となっ…

　さようなら。先輩、と菘は言った。

「カンチョーをするスキル？」 「ええ。それがあなたに授けられるチート能力です」 　……おいおい。 　ずいぶんとふざけた能力じゃねえか。 「そのスキルはイメージが良くないので…

　――ダンジョンには危険がいっぱい。 　命の危険を覚悟してダンジョンに潜る【多額の借金を持つ少年・パトリクス】。 　彼はダンジョンの奥――【地図作り】をする【先頭の攻略者】が取り…

　ぐぢゃり。 僕は握った肉塊を、両手で二つにねじ切った。命っていうのは、煮込んだ茄子みたいに柔らかい。あるいはひょっとすると、僕自身の生命だって。

遂に人類再利用法律が施行された。 引きこもり、精神疾患者、犯罪者、社会脱落者を、親族の同意を得て、強制的に自動人間（オートマン）化させる法律だ。前頭葉にAI搭載電気刺激装置を埋…

　中学二年生の斑鳩露花（いかるがろか）は、車椅子の少女。棒高跳びの練習中、脊椎を損傷し、半身不随となる。下半身は動かない。そして、左手は親指しか動かすことができない。 　そんな露…

　不慮の事故だった。小さなチューリップ畑の中で少女は死んだ。まだ片手で数えるほどしか生きていない少女の腹からは両手で抱えきれないほどの色とりどりの内臓が溢れ落ちていた。 　チュー…

こんなにもすごい光景を、自分は忘れてしまったのだろうか。 おかえりなさい、と。 みんなで待ってたんだ、と。 口々に優しい言葉をかけてくれる彼女たちに、実は表情を歪めるしかなかっ…

2022年夏、連続猟奇殺人事件が発生した。 被害者全員に共通しているのは、遺体は必ず笑顔で死んでおり、両手を合わせ、 内臓は引き裂かれ綺麗に並べられている。 刑事である佐々木　恭…

　無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。 　突然、空から女の子が降ってくると…