世界の十字路8~深き水底の愛~

時雨青葉

プロローグ

誓い

 あの子は、いつも一人だった。



 花が美しく咲き乱れる春も。

 深い緑と陽射しが綺麗にきらめく夏も。

 果実が実る赤く鮮やかな秋も。

 全てが真っ白に染まる冬も。



 あの子は、ずっと一人でいた。



 あんなに素直な子なのに。

 あんなに無邪気に笑う子なのに。



 それなのにあの子は、周囲からほぼ完璧に隔離されていた。

 こんな、深い森の中に。



 これは、自分を守るためには仕方ないこと。



 あの子は悲しそうに、そして寂しそうにそう言って笑った。

 周りに見せる顔とは正反対の顔を、ここでは隠さずに見せていた。



 私は知っていた。



 ここで無邪気に笑うあの子が、本当は誰よりも臆病で、全てを恐れていることを。

 無理やり大人になって、そんな気持ちを必死に押し殺していることを。



 まだ、あんなに小さいのに……



 だから、誓った。





 ずっとずっと、私があなたを守るって―――




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