さようなら今世、こんにちは来世

きょろすけ

第1話 さようなら今世

「あなたは現世に不満はありますか??」


飲み屋で1人で飲んでいた時に、隣に座った男にそう囁かれた。


は年齢は定かではないが、とても若いように見える。

社会人になりたてだろうか。

男というよりも、青年という言葉が似合う。



「あぁ、不満だね。上司には毎日怒鳴られ、結婚はしたが嫁と子供に逃げられた。もう年齢も定年間近だ。この世になにも幸せはねぇよ。どーしろってんだ。あとは死ぬだけよ。」


そう俺は声を掛けてきた見ず知らずの青年に答えた。


「やり直しませんか、人生。」


そう言った男の目は、黒く深い闇のようで

見つめていると吸い込まれそうになる。



「やり直せるなら、そうしてぇよ。」


そう答えた。


「それなら、一度ここへ連絡して下さい。」



青年から渡された1枚の名刺には

「不満を持つすべての人へ」

そして、電話番号が書かれていた。


ありがとよ。


なんだ宗教か、そう感じた男は早々と会計して帰ろうとする。


「あなたは必ず電話する。そしてまた会いましょう。」



なに言ってんだか、変なのに絡まれたなぁ。


早々と立ち去った。


なんか興醒めたなぁ、もう一軒飲んで帰るかぁ。


そう思い立ち、次の店へと向かった。









最後に彼を見たと言う証言はここで終わっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さようなら今世、こんにちは来世 きょろすけ @kyo-suke777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ